愛着障害という病名はないが

 精神科の医師に、「私は愛着障害なのではありませんか?」と聞いてみてほしい。精神科の医師はこう言うことだろう。「愛着障害という病名はありません」ときっぱりと言い切るに違いない。そして、愛着障害という精神疾患はないのだから、愛着障害を治す薬もないし、治療法もありませんと続けることだろう。確かに、医学界では愛着障害を精神疾患として取り扱っていないし、治療する医師は殆どいない。しかし、実際に愛着障害で苦しんでいる人は非常に多いし、愛着障害による二次的症状で辛い思いをしている人は想像以上に多い。

 

 ひきこもりの状態にいる人は、日本の中で少なくても115万人いると言われている。このひきこもりになっている本当の原因は、単なるメンタル疾患や精神障害ではなくて、愛着障害だと言っても過言ではないだろう。また、発達障害と診断されている中の多くは、愛着障害の二次的症状として現れているだけであろう。発達障害があることで虐めに遭いひきこもりになっているケースでは、元々愛着障害があると思われる。双極性障害やうつ病などの気分障害においては、愛着障害が根底にあることが少なくないのではないかとみられる。

 

 不登校やひきこもり、そして発達障害や気分障害を起こしている根底に愛着障害があるのではないかと思われる。勿論、すべての対象者が愛着障害だとは言い切れないが、かなりの割合で愛着障害を抱えているのは確かであろう。愛着障害とは精神疾患(病気)ではないが、多くの精神疾患の元になっている可能性は非常に高い。そして、精神疾患だけでなくて生活習慣病を始めとする多くの身体疾患に罹患する要因にもなっている気がする。さらには、パーソナリティ障害(人格障害)を抱えている人にも、不安定な愛着を持つケースが多い。

 

 こんなにも深刻な二次的な症状を起こす愛着障害であるが、どういう訳か精神医学界ではあまり注目しない。愛着障害が根底にあっての二次的症状だとすれば、投薬治療では完治させられないし、いくら優秀なカウンセラーやセラピストであっても根本治療は不可能である。現代の精神医療において、医学の発達がこれだけ進んでいるのに治療効果が上がらないのは、根本的な疾病の原因を探り当ててないからと言えないだろうか。愛着障害を克服しなければ、精神疾患を完治させられないし、これからも様々な疾患が増え続けるだろう。

 

 殆どの精神疾患と身体疾患の根本原因が愛着障害にあるのではないかと唯一提唱している精神科医が存在する。それは、岡田尊司先生である。岡田先生は、元々はパーソナリティ障害を専門に研究されていた。パーソナリティ障害を抱えて苦しんでいる青少年を、献身的に治療されていらしたのである。パーソナリティ障害に関する著書や研究論文も多数ある。青少年犯罪を起こすパーソナリティ障害の子どもたちを診療していたら、強烈な愛着障害を抱えていることに気付かれたのであろう。それから愛着障害を癒す治療に専念されてきた。

 

 岡田先生の著書に、『死に至る病~あなたを蝕む愛着障害の教委』(光文社新書)というものがある。現代人は何故幸福になれないのか?どうして生きづらさを抱えているのか?何故、こんなにも精神疾患や精神障害を抱えている人々がいるのか?と問われ、それは根底に愛着障害があるからだとこの著書の中で岡田先生は主張されている。そして、驚くことに自分はごく普通の家庭で育ち、両親からたっぷりの愛情を注がれてきたと思っている人でも、愛着障害を抱えているケースが結構多いことにも着目している。こういう人は、原因が解らない強烈な生きづらさを抱えていて、社会への不適応を起こしている。

 

 愛着障害を抱えている人たちは、殆ど漏れなくHSP(ハイリーセンシティブパーソン)を抱えている。神経学的過敏症、並びに心理社会学的過敏症を起こしてしまっている。故に、強烈な生きづらさと適応障害を抱えているのである。また、愛着障害の女性はPMSやPMDDを抱えているケースが非常に多い。そして、過緊張を抱えているが故に、身体のあらゆる場所に疼痛を起こしていることが多い。線維筋痛症を発症することも少なくない。原因の解らない身体の不調やメンタル疾患を抱えていたら、愛着障害があるのではないかと疑ってみたらどうだろうか。愛着障害を癒せたら、心身の不調は見事に解決できるだろう。

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