ネバーランドという国をご存知だろうか。勿論、実際に存在する島国ではなくて、架空の世界にある島国のことである。ピーターパンの戯曲に出てくる国のことだ。ピーターパンと同じように、ネバーランドに住む子どもたちは年をとらない。永遠の子どもなのである。と言うか、大人になりたくない子どもたちである。ピーターパン症候群というパーソナリティ障害があるが、ネバーランドに住む子どもたちは、ある意味ピーターパン症候群だとも言えよう。日本でも、ネバーランドから抜け出せない大人が沢山いることに驚く。
ピーターパン症候群は、男性に多いと言われてきた。しかし、女性にも同じように大人になり切れず、子どものままの精神状態に置かれたままになっている人がいる。アダルトチルドレンと同じようなパーソナリティ症状を呈する傾向がある。ひきこもりの状態に追い込まれてしまっている人も、ネバーランドの住人だと言えなくもない。ネバーランドの住人達は、その精神が極めて強い幼児性を示す。回避性、または逃避性のパーソナリティを持つ。さらには、強い依存性のパーソナリティも示す。そして、ネバーランドから出て来ようとしない。
ネバーランドの住人たちは、子どものようにプラモデルが大好きだったり、アニメやゲームに引き込まれていたりする。中には、大人になってもキティちゃんが大好きだったり、アニメに登場するフィギュアの収集癖もあったりする。心が子どものままだから、純粋なあまり潔癖症でもあり、完璧主義にも陥りやすい。付き合う相手にも純潔や母性・父性を求める傾向が強いから、恋愛が成就することはあまりない。どうして、ピーターシンドロームになってしまうのかというと、乳幼児期の育てられ方に問題があったせいではないかと思われる。
今でもネバーランドに住んで、大人の社会に出て来られない人は、愛着障害だと思われる。つまり、乳幼児期に何らかの問題があって、十分な母性愛を与えられなかったのであろうと思われる。または、愛情が与えられたとしても条件付きの愛だったし、あまりにも介入や干渉をされ過ぎた愛だったのだと思われる。それ故に親との良好な愛着が構築されなかったので、甘え体質と依存体質を卒業できなかったのだと思われる。あるがままでまるごと無条件の愛をたっぷりと注がれないと、自己肯定感や自尊心が育たず愛着障害になるのだ。
ネバーランドの住人たちは、自分がピーターシンドロームだという自覚がないし、愛着障害だとは思ってもいない。あまりにもネバーランドの居心地が良いものだから、ピーターパンのようにそこから抜け出ようとしない。当事者の自覚がなければ、いくらネバーランドから支援者が彼らを救い出そうとしても、徒労に終わってしまう。なにしろ、ネバーランドの住人は頑固であり拘りが強い。素直に聞き入れることが出来ない。中には、謙虚な気持ちで受け入れてくれる女性はいるが、殆どの男性は頑固であり、聞く耳を持たない。
ネバーランドの住人がそこから抜け出すことは難しいが、ひとつだけネバーランドから出られる可能性がある。男性であるならば、母性愛豊かなウェンディのような女性に出会うことである。ネバーランドに住むのが女性ならば、ウェンディのような母性愛を注げる包容力の豊かな男性に出会うことである。まるごとあるがままに愛してくれる異性に出会い、支えてもらえたならネバーランドから抜け出せるかもしれない。しかし、残念なことにそういう人は稀有な存在であるし、ネバーランドの住人は恋愛下手なのである。
ネバーランドの住人は、精神的に幼稚であるから気ままな性格だし、気分が不安定なので突然怒りを爆発させたり落ち込んだりする。自尊心や自己肯定感が低いから、自分に自信が持てない。対人恐怖症や対面恐怖症があるし、醜形恐怖症が伴いやすい。異性とコンタクトを取るのがそもそも苦手なのである。これでは、恋愛に発展しにくいのは当然である。そんな気難しいネバーランドの住人であっても、そっと支えてくれる異性が現われてくれたなら、勇気を振り絞って甘えてほしいのである。ネバーランドから抜け出せるのは、これしかないのである。さあ、ネバーランドから出ておいで、ピーターパンさん。