甘えさせ方を知らぬ親と甘えられぬ子

不登校やひきこもりの子どもたちを支援していてすごく感じるのは、甘えるのがとても苦手だという点である。甘え下手と言えるほど、親に甘えることがまったく出来ない子どもが多い。そして驚くことに、その親が甘えさせ方を知らないのである。甘えさせ方を知らない親なのだから、子どもが甘えることが苦手になるのは当然だ。さらに親自身の育てられ方を検証してみると、自分自身もまた甘えられずに育ったという過去を持つ。つまり、甘えられずに育った大人は、自分が親になった時に子どもに甘えさせることが出来ないのだ。

さらに付け加えると、甘えさせ方を知らない親の両親である祖父母もまた、甘えられずに育ったということが判明している。つまり、甘えることと甘えさせることを知らないということが、世代間連鎖をしているという事実があるのだ。これは、子育ての極意として伝わっている社会常識、『過保護過ぎると自立できなくなる』という教えが強く影響していると思われる。甘えさせ過ぎたり依存させ過ぎたりして育てると、甘えん坊になって自立性が損なわれてしまうと思い込んでいる人が殆どなのである。

実は、この甘えさせたり依存させたりして育てると子どもが自立できなくなるというのは、完全に間違いである。甘えさせず依存をさせないで育てると、その子どもは逆に自立できなくなる。やがて、メンタルを病んでしまい、不登校やひきこもりになるケースが多いのである。このことは、著名な児童精神科医で川崎医療福祉大学の特任教授だった佐々木正美先生は、過保護こそが大事なんだと語っていらっしゃる。そして、子育てにおいて過保護過ぎるということはまったくない、過干渉や過介入こそが問題なのだと先生は断言されている。

何故、十分に甘える経験をしないと自立できなくなるのだろうか。また、過干渉や過介入することがどうして問題なのであろうか。それは、人間の正常な精神発達において、甘えや依存という段階がどうしても必要だからである。社会通念上、甘えや依存は悪いこととされているが、そんなことはない。乳幼児期に子どもは母親に十分に甘えて無条件の愛に包まれないと、正常な自我が芽生えないのだ。人間と言うのは、最初に自我が芽生えてから、やがてその自我を乗り越えて、自我と自己を統合させて精神的に自立するのである。

また、子どものうちに過干渉や過介入を繰り返すと、人間は自己組織化が阻害されてしまうのである。つまり、あまりにも幼少期から指示・所有・支配・制御を親から受けてしまうと、人間として生きるうえで大切な、主体性・自主性・自発性・責任性・関係性が芽生えないばかりか、自己成長が止まってしまうのである。そして、オートポイエーシス(自己産生)の能力が阻害されて、自ら何も生産や産出が出来ないような人間なってしまうのだ。つまり、人間として不十分な精神を持つばかりか、身体的にも劣ってしまうことになる。

子どもが親に心から甘えるには、親が子どものことをまるごとありのままに愛する態度を取る必要がある。そのように無条件で愛されることで、甘えたり依存したりできるのである。そして、大事なのはまずは無条件の愛で十分に包まれてから、躾である条件付きの愛が注がれるという順序である。これが逆であったり同時であったりすると、自尊感情や自己肯定感が生まれず、ずっと不安感や恐怖感を持ち続けてしまい、社会に適応できなくなる。不登校やひきこもりになってしまう可能性が高くなる。

無条件の愛を通常『母性愛』と呼び、条件付きの愛を『父性愛』と名付けている。まずは母性愛をたっぷりと注がれてから父性愛を受ければ、子どもは健全に育つことができる。ところが、無条件の愛である母性愛が不十分だと、自我の芽生えがなく反抗期もなくて大人になり、精神的な自立が出来ないまま大人になる。これがアダルトチルドレンであり、愛着障害である。社会に対する不適応を起こしやすいし、メンタルを病むことが多い。だからこそ、乳幼児期に母性愛をたっぷりと注ぎ、十分に子どもを甘えさせることが必要なのである。甘えて甘えて甘え切ったら、子どもは自然と自立して親を離れるのである。

※甘えることが出来なくて甘え下手の大人になってしまったら、アダルトチルドレンや愛着障害になってしまい、ずっとその状態が続いてしまうのかと言うと、そうではありません。適切な愛着アプローチによって、甘えることを体験すると、精神的な自立が可能になります。イスキアの郷しらかわは愛着アプローチを活用して支援します。自分が甘え下手だなと感じている人は、問い合わせフォームからご相談ください。

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