若者の自己肯定感が低いと批判するけど

元農林事務次官が息子を刺殺して、裁判で6年の懲役刑判決を受けた。この息子は自己肯定感が極めて低くいことが問題だったと報道されている。日本の若者は自己肯定感が極めて低いと批判されることが多い。自己肯定感というのは、自尊感情とも言われることもあるが、確かに日本人は自己肯定感がとても低いと感じる人は少なくない。そして、この自己肯定感が低いから、元農林事務次官の息子のように不登校・ひきこもりになりやすいと主張する教育関係者も少なくない。自己肯定感が低いと批判されるが、それは自己責任なのだろうか。

日本の学校教育に問題があり、自己肯定感を高めることが出来ないと言われている。常に行き過ぎた競争にさらされているし、出来たことを誉められるよりも出来ないことを徹底して否定されるからだと言われている。確かにそういう側面がない訳ではない。学校教育では、批判や否定されることが多いことから、自己肯定感が育ちにくい環境にある。しかし、それは仕方あるまい。受験戦争や就職戦線を勝ち残るためには、ある程度の競争に勝ち抜く精神力だって必要だ。ましてや、企業内の出世競争や社会競争に勝つための予備訓練でもある。

学校教育や社会教育に問題があるから、自己肯定感が育たないという考え方には同調できない。学校の教育にも少しは問題があるのかもしれないが、自己肯定感を育むのはやはり家庭教育ではなかろうか。というのは、自己肯定感や自尊感情というのは、あくまでも乳幼児期にその基礎が作られると考えられるからである。児童心理発達学において、子どもの基本的な認知や行動傾向というものは、3歳頃まで決定されると言われている。勿論、自尊感情や自己肯定感という大切な基本も、3歳から遅くても4歳までに育まれるのである。

『三つ子の魂百までも』という諺は昔からずっと言われ続けてきた。これは、多くの親の子育て経験から生まれてきたものであり、まったくその通りである。3歳までになんとしても作られるべきなのは、絶対的な自尊感情と自己肯定感であろう。そして、その自尊感情や自己肯定感は、母親が無条件の愛情をたっぷりと注げるかどうかにかかっている。あるがままに認め受け容れる豊かな母性愛を受けた子どもは、自己肯定感が育まれる。父性愛的な条件付きの愛を先に注がれてしまうと、自己肯定感が醸成されずに育ってしまう。

自己肯定感は、独りでに身につくものではないし、自分の努力でどうにかなるものではない。巷でよく言われるように、成長してから成功体験をいくら積んでも、高い評価を何度も受けたとしても、絶対的な自己肯定感を持つことはない。やはり、三歳くらいまでにありのままの自分全部を愛される経験がないと、自己肯定感が身に付くことはない。そして、この自己肯定感や自尊感情が豊かに育まれないと、愛着障害を起こすことも多い。愛着障害になると、大人になって突然メンタルを病んでしまうことも多いし、ひきこもりになるケースも少なくない。

自己肯定感を持つことは、自分の努力でどうにか出来るものではない。親が適切な子育てをすることで確立される基礎が作られるのである。父親が仕事とか何かの理由で子育てに参画できず、安定して父性愛を注ぐことが出来なくなると、母親が母性愛と父性愛の両方を子どもに注いでしまうケースが多々ある。この場合、「あなたを愛してるよ」と言う一方で、「こんなことをする子は大嫌いよ」と突き離すことを言ってしまいがちである。これはある意味ダブルバインド(二重拘束のコミュニケーション)であり、子どもは愛着障害になる。

相反する言葉で、子どもをダブルバインドで迷いや不安の状態にしてしまうと、愛着障害にさせてしまうと、自己肯定感が育つことがない。こうなると、主体性・自発性などが育たないばかりか、回避性の人格や依存性の人格を強く持ってしまう。新たなチャレンジをする勇気もなくなる。今の若者は自己肯定感がないと批判する中高年者がいるが、それはあなたたちに原因があるのだ。我が子に対する適切な愛情を注げなかったから、自尊感情や自己肯定感が育たなかったからである。自己肯定感は、自己責任ではないのである。

※自己肯定感や自尊感情が異常に低いと感じる人は、もしかすると『愛着障害』かもしれません。イスキアの郷しらかわでは、自己肯定感が低い理由とその対策についての研修をしています。愛着障害を乗り越える方法についてもレクチャーと支援をしています。問い合わせのフォームからご相談ください。

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