引き出し屋(ひきこもり支援業者)は危険

ひきこもりを無理やり社会復帰させるビジネスが横行している。昔、〇〇ヨットスクールとかいうスパルタ式の矯正施設が話題になったことがあるが、これに近いような社会復帰施設があるらしい。ひきこもりの人たちを社会復帰させるので、引き出し屋とか引き出し業者と呼ばれているという。なんともすごい名称である。しかし、実際のインターネット上では、〇〇自立支援センターとかいかにも公的な名称を名乗り、ソフトな印象を与えている。ウェブサイトを見た保護者が藁にもすがる思いで、社会復帰支援の契約をしているらしい。

引き出し屋のウェブサイトを見てみると、実にうまくできている。ひきこもり当事者だけでなく、親たち保護者が見たら期待を抱かせる内容になっている。心理的ケアも充実しているし、職能訓練もしてくれる。さらには、就労支援のための職場訓練もさせてくれる。そして、社会復帰成功率が8割とか9割と謳っている。誰でも飛びつきたくなる。特に、ひきこもりの当事者よりも、保護者が期待してしまうのは当然である。当事者がたとえ施設利用を希望しなくても、親が無理にでも子どもに引き出し屋を利用させたくなる内容だ。

この引き出し屋と呼ばれる一部の業者が、ひきこもりの当事者や保護者から訴えを起こされているという。本人の同意もなくて、あまりにも強引な方法で無理やり施設に入所させて、人権を無視したような拘束までしていると訴訟を起こされている。保護者からは、暴利をむさぼるような利用料を取っていながら効果がまったくないと、料金返還の訴えをされている。なにしろ、6ケ月間の利用で500万円を超す料金設定になっているというからものすごい。一時的とはいえ社会復帰を果たしているという実績があるから、相当に強気なのだろう。

8割から9割もの利用者が社会復帰を実現しているというから、すごい実績だと感心する人も多いだろうが、果たして本当にそんなことが起きるのだろうか。社会復帰した人たちが、その後にどうなったかという記述はウェブサイトでは見られない。あくまでも想像でしかないが、完全復帰してその後何も問題なく社会生活を送れた人は極めて少ないような気がする。職場での人間関係のトラブルが起きたり、心身の不調を来したりして、再度ひきこもるような事態になっていると思われる。さらに深刻な心身の不調で苦しむ人も少なくないだろう。

どうしてそんな事態になってしまうかというと、ひきこもりになる根本的な原因が解決されていないからである。引き出し屋で実施するのは、本人へのカウンセリングやセラピー、認知行動療法などの心理療法などと職能訓練である。または、生きがい療法なども取り入れているらしい。しかし、ひきこもりになってしまったそもそもの原因を特定していないし、その原因を何ら解決していないのである。逆に、原因となった親との愛着における不安定さや傷つきを、さらに悪化させるという誤謬を犯しているように感じる。これでは、ひきこもりの完全解決を実現するのは難しいに違いない。

子どもがひきこもりになっている根本的な原因は、親との健全な愛着が構築されていないからである。つまり、子どもが全幅の信頼を親に寄せていて、両親からの豊かな母性愛と父性愛を注がれていれば、深くて安定した愛着が結ばれるので、子どもはひきこもりや不登校にはならない。両親夫婦の関係性が良くなかったり、母親の愛着が不安定とか傷ついていたりすると、親子の正常な愛着が上手く結べないことがある。そうすると、子どもの愛着も不安定化したり傷ついたものになったりする。したがって愛着障害を癒すには、当事者だけでなくて親への愛着アプローチが必要なのである。そういう親への支援をする業者は少ないみたいである。

子どもの意思を無視して、無理やり施設に入所させるというような乱暴なことをすれば、親子の愛着はさらに傷つく。親が自分の責任を放棄して他人に子どもを預けて、自分はまったく変わろうとしないというのは、育児放棄に等しいと思う。ひきこもりは親子の愛着の不安定に原因があるだから、変わらなければならないのは本人だけでない。親も一緒に変わる必要がある。だからこそ、親子への愛着アプローチが必要なのであるし、引き出し屋にすべてを委ねてしまうのは危険だと言わざるを得ない。引き出し屋に子どもを預ける前に、もう一度よく調査してからにしてほしい。親への支援もする引き出し屋なのかどうかを。

※イスキアの郷しらかわでは、ひきこもりの社会復帰支援をしていますが、当事者だけでなく保護者に対するサポートも同時に実施しています。そのほうが、ひきこもりを乗り越えることが確実に可能になるからです。問い合わせから一度ご相談なさってみてください。電話相談やメール相談も無料で実施しています。

 

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