またも児童相談所の怠慢で

札幌でまた虐待死事件が起きてしまった。2歳の詩梨(ことり)ちゃんが衰弱死をした事件である。勿論、この母親と交際している男性が暴行を繰り返して虐待やネグレクトをしたことが、この虐待死に繋がったのは間違いない。それにしても、問題なのは児童相談所の対応の拙さである。3度も虐待しているとの通報がありながら、虐待とは見られないとの間違った判断をして、みすみす詩梨ちゃんを死なせてしまったことは言い訳できない失態である。児相が的確な判断をして、適切な保護をしていれば救えた命なのである。

虐待の報告を受けたら、児相は親と本人に面談をすることになっている。しかも、虐待が疑われる際には48時間以内に、たとえ面談を拒否されたとしても、内部介入する規則が設けられたばかりなのである。2回目の通報で、この定めを実行すべきなのに、児相が怠ったことでこんな悲惨な事件が起きてしまったのだから、児相の罪は大きいと言わざるを得ない。大切な幼な子の命が奪われたというのも悲惨であるが、母親に我が子殺しという大変な罪を背負させてしまったという責任も大きいと言えよう。児相の職員は何をしていたのだろう。

児相の職務怠慢によって、幼い子どもが犠牲になったという事件は枚挙にいとまがない。もう少し丁寧な対応をしていれば救えた命がたくさんあるのだ。いくらマンパワーが不足しているとは言え、緊急避難的に救い出さないといけない事案は、最優先的に実行すべきだ。児童相談所の人員が圧倒的に不足しているという状況を勘案したとしても、子どもの命を守れていない児相の怠慢さは問題があろう。こんなにも児相の問題が提起されているのにも関わらず、その運営における抜本的な改善がされていないのは何故だろうか。

児童相談所が子どもたちの命を守れていない理由は、第一に業務量が急増しているのに職員数が絶対的に不足していることがある。虐待通告を受けても、満足に調査ができえる人員配置がされていないのであろう。二つ目の理由は、児相の相談業務のマネジメントができていないということである。児相の所長を始めとした管理者が、職員の業務の管理と指導をしていないと思われる。三つ目の理由は、相談員の業務遂行能力不足とメンターとしての資質が不足している点だ。虐待を見抜く洞察力がなく、保護者を指導する力量がないと思われる。

児童相談所の職員が不足しているという問題は、以前より各界から指摘されているが、それ以上に問題なのは、相談員としての資質を持ち得ている職員が不足していることである。児童相談員とは厚労省が制定した任用資格を取得した人だけがなれる。その資格はあくまでも任用資格であり、地方公務員の採用試験を通ることが前提となる。そして、例外はあるものの殆どが福祉系または心理学系の大学や学部を卒業した学生が相談員として就職している。実は、これが資質不足を呈しているそもそもの原因になっているのではなかろうか。

相談員として必要な資質とは、児童心理学や精神医学の知識、またはカウンセリング能力だけではない。それ以上に必要な資質は、メンターとしての能力である。虐待やネグレクトを受けている子どもは愛着障害を抱えている。そして、その母親や父親もまた愛着障害を抱えていることが多い。その愛着障害を癒したり和らげたりすることが相談員に求められる。メンタライジング能力がないと、愛着障害を抱えている児童や保護者を適切に支援することができない。メンタライジングについての専門的知識を学んだとしても、その能力を持てるとは限らないのである。

誤解を受けずに言えば、福祉系の仕事を目指す学生は、自分自身が傷ついたり不安定な愛着を抱えたりしていることが多い。愛着に問題を抱えている人間が、正常なメンタライジング能力を持つことは、非常に難しいと言わざるを得ない。採用する際に、メンタライジング能力に長けた学生を採用すればいいのだが、面接でそれを見抜ける目を持つ面接官がいるとは思えない。だとすれば、厚労省は児童相談員の任用資格を抜本的に見直してもいいじゃないかと思う。民間企業で社員の教育や指導をしてきた経験を持つ優秀なメンターを採用することを検討してはどうだろうか。企業内で愛着障害を抱えた社員を指導してきた経験が、生かされるに違いない。経験豊富なメンターが、虐待をしている親に適切な愛着アプローチをすれば、親子の良好な愛着を結びなおし、虐待を止めさせることが可能になるであろう。

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