介護されない老後を目指す

介護施設において、短期間で多くの利用者が死傷する事件が起きている。それも、特定の男性介護職員が関わっているのではないかという疑惑に発展している。それにしても、介護施設では高齢者虐待や窃盗事件が多発するようになっている。介護施設で働く職員が過重労働の割に待遇も悪く、評価されないという特有の事情もあると言われているが、明らかになっていない虐待や殺人事件も他にもあるのではないかと想像されている。日本の介護制度に、大きな欠陥や制度設計のミスがあるから、こんな事件が起きるのだろう。

介護される対象者が増え過ぎてしまい、介護に携わる職員が絶対的に足りなくなってしまっているという問題がある。介護職員の定着率が非常に悪く、介護施設や介護組織を渡り歩く転職組が多いし、介護職から離職する人が少なくない。よく言われていることだが、あまりにも介護職員が足りないので、どんな人間でも採用してしまうことから、介護職員の質が低下しているという。介護という職業を自ら希望して選ぶのではなく、消極的な選択として介護職を選ぶしかない人間が多いと聞いている。日本の介護制度が根本的に間違っているから、こんなミスマッチが起きてしまっているに違いない。

そもそも、厚労省が介護保険制度を設計する際に、寝たきりになってしまう高齢者を皆無することが目標だった筈である。ましてや、介護施設で高齢者を介護させる為に介護保険制度を作ったのではなく、自宅で自らの老後を自分の力で健康で暮らすために作った制度である。施設で介護するのは、緊急避難的な措置として必要なケースだけだった筈だ。ところが、実際は本来介護されなくてもいい高齢者を自宅から施設へという流れが起きてしまった。それも、QOLが改善して自宅に帰る人は皆無で、亡くなって退所する人が殆どである。厚労省が予想した介護制度とは、まるっきり正反対になっている。

厚労省だけが悪い訳ではない。高齢者とその家族が、大きな誤解をしているからである。そんなふうに誤解させてしまった厚労省にも責任があるが、国民が勘違いしているのである。高齢者になってしまうと、何らかの障害を持ったり認知症になったりするのは、当然だと思い込んでいるのである。厚労省の役人だって、介護される高齢者、寝たきりの高齢者をゼロにするのは難しいと諦観さえしている。しかし、自分の生活を抜本的に見直せば、要介護や寝たきりになることは予防できるのである。

それでは、介護されない老後を目指すには、どんな生活をすれば良いかというと実に簡単である。まずは、食生活を抜本的に見直すことである。腸内細菌を健康にするような食事にすることが肝要である。出来る限り添加物、農薬、化学肥料の少ない野菜中心の食事にすると、腸内フローラが実現する。さらに、脂肪分、糖分、乳製品、牛肉や豚肉を控えると共に、バランスの良い食事を心がけることが求められる。過食もよくないし、インスタント食品やスナック菓子、ジャンクフードやファストフードを食べないようにするべきだ。

介護されない老後を実現するには、休養や運動などの生活習慣も大切である。特に良質な睡眠を取ることは、認知症予防や高齢者のメンタル障害を防ぐのに有効である。良好な睡眠には、昼間に太陽光を浴びて運動をするのが必要である。認知症を防ぐには、骨に負荷をかける運動が必要不可欠だ。骨に衝撃を加える運動を日常的に実施すると、骨粗しょう症を防止するだけでなく、認知症を予防し、筋肉増強もするし、免疫力を高めることが判明している。つまり、骨にとって少しハードな運動を続けることが寝たきりを予防するのだ。介護されない老後を続けるには、アウトドアのスポーツが最適である。

さらに、介護されず寝たきりにならない大事な予防策がある。それは、精神的なタフさであり、しなやかな心である。つまり、プレッシャーに打ち勝てる心と、ストレスを乗り越えることができる精神の柔軟性である。このような健全な精神性を発揮することが可能になるには、高齢者になってもボランティア活動や市民活動を心から楽しめる価値観を持つことである。他人の幸福を心から願うことが出来て、豊かな社会の実現に自らが進んで尽力できる精神性があれば、身体が健康で元気な老後を過ごせるのである。介護をされずに老後を生きることは、自分の努力次第なのだと認識するべきであろう。

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