グレイヘアは自分を解放する

グレイヘアが静かなブームを呼んでいるらしい。自分自身も3年前からヘアカラーで黒髪に染めるのを止めてグレイヘアにしたのだが、自分でもとても気に入っている。男性がカラーリングを止めてナチュラルヘアにするのは抵抗がないだろうが、妙齢の女性が黒髪からグレイヘアにするのは勇気がいるに違いない。それでも敢えて黒髪に染めずに自然のままにするという女性が増えているというのだ。それは、自分が自分らしく生きるという選択をして、自分の姿と心をありのままでもいいんだと解放することに繋がるというのだ。

女性はおしなべておしゃれであるし、みだしなみに気を付けている女性が圧倒的に多い。白髪という言葉のイメージがあまりにも悪い。グレイヘアと呼ぶならば印象も良いから、染めないという選択をする人もいるだろう。だとしても、やはり白髪のままでいるのは避けたいであろう。ましてや、ビジネスの場面に居続けるにはグレイヘアでいるのは抵抗感があまりにもある。白髪のままでいるのは、面倒くさがり人間とか、だらしない人だと見られやすいことも影響している。染めるという無難な選択をせざるを得ないであろう。

今までも60代以上の男性の中には、敢えて染めなくてもおしゃれに見せられる芸能人がいた。代表的な芸能人としては、吉川晃司、柴田恭兵、渡辺篤郎、舘ひろし、柳葉敏郎などである。彼らは大物芸能人と呼ばれて、存在感のある演技にも定評があるし、人間としても魅力あふれる成熟した大人である。女性芸能人でも、グレイヘアが似合う人が増えてきた。草笛光子、中尾ミエ、永作博美、有働由美子は素敵なグレイヘアを見せている。彼女らは、グレイヘアであっても仕事が減らず、逆に増えているという。

元フジテレビのアナウンサー近藤サト女史が、悩みに悩んだ末にグレイへアを選んで、自分らしく生きることを選んだという。若い頃から白髪が増えてしまっていて、アナウンサーを続けるためにはカラーリングが必要だと自分に言い聞かせてきたらしい。しかし、本来の自分の姿を押し隠してまでして、偽りの自分を多くの視聴者に見せていることに違和感を覚えたという。それは、自分の心までも偽ることに通じはしないかと悩んだという。あるがままの自分を見せたいと決断し、グレイヘアでTVに出ることにしたという。

人は誰でも、自分の醜い部分を隠しておきたいものだ。いつまでも美しい自分でありたいし、他人には美しい自分を見せ続けたいであろう。ましてや、美貌を売り物とする芸能界であれば、若い年齢でグレイヘアをさらすのは自殺行為にも等しい。白髪の頭では仕事もなくなるのではという恐怖感にさいなまれることだろう。しかし、それは本当の自分を隠すということであり、本当の自分を否定するということでもある。人間は、自分の醜い心を隠して生きているが、それが故に生きづらい人生を歩むことにもなる。白髪を隠して生きるというのは、本当の心を隠して生きることに通じるのかもしれない。

白髪を染めずにグレイヘアを敢えて見せることをした女性たちは、おしなべてその時点から生き生きとした人生を歩んでいるという。それまでは、避けていたパステルカラーのファッションに身を包むのが楽しいと言っている。ピンクやクリーム色の服が実に似合うようになったと喜んでいるらしい。表情も明るくなり、いつもけれんみのない笑顔がはじけるという。そして、あるがままの自分を見せることで、自己肯定感が強くなったと口を揃えて微笑む。自分らしさを誇らしく思えるようになったと言うのである。

人間というのは、自分を見る際に自分の目を通して観るのでなくて、いつも他人の目を通して観察したがるものである。特に日本の女性は、男性から見たらどう思われるかという視点から自分を評価したがる傾向にあるらしい。だから、必要以上にフェミニンなファッションに身を包みたくなるし、可愛いと言われたいらしい。本来は、自分の価値観や自分らしさに見合った服装やメイクをしたいのに、他人の目を気にするあまり、あるがままの自分をさらけ出せない女性が多いということだ。グレイヘアを選択する女性が増えてきたというのは、あるがままの自分を見せることが出来る自立した女性が増加してきたと思われる。グレイヘアは、自分を解放することに繋がるのだろう。

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