どうしていいか解らないひきこもり

ひきこもりは、全国で54万人もいるという。しかも、これは39歳までの年齢層だけであり、40歳以上のこきこもりも加えたら、100万人を超える数字になるかもしれない。何故なら、ひきこもりの実態をひた隠しにしている家庭は多いし、自分の子どもがひきこもりだとは思いたくない親が多いのである。厚労省の調査統計上は、6ケ月以上に渡り家庭内にいるというしばりがあるので、その期間に少しでもアルバイトをすれば除外される。しかも、実質的にはひきこもりなのにその範疇にはじかれるひきこもりも多いと思われる。

ひきこもりの5人に1人近くは、不登校から移行するらしい。そして、ひきこもりになるきっかけは、学校でのいじめや職場における嫌がらせ・パワハラ・セクハラ・モラハラなどがあげられるという。特徴的なことは、それらのきっかけになったことを家族に相談しないというのである。一人でそれらの問題を抱え込んで、悩み苦しみ行き場もなくて、ひきこもってしまうらしい。家族はいたとしても、孤独感を抱えて生きているというのだ。

どうして、ひきこもりになるきっかけが起きた際に家族に相談できないのだろうか。その時に家族に相談してくれたとしたら、なんとか対応もできたに違いない。しかし、ひきこもっている人は、親に相談できない人が殆どである。ひとつは、親に心配をさせたくないという気持ちもあろうが、親に相談をしたいと思わないのではなかろうか。親を信頼していないなどというと少し乱暴であるが、親が解決してくれるだろうという確信を持てないからではなかろうか。親への絶対的な信頼感と敬愛感があるなら、相談するに違いない。

ひきこもりや不登校の方たちの相談を受けていて感じるのは、育児や家庭教育における父親の存在感が希薄であるケースが多いということである。父親の職業がハードな勤務状況にあるとか、単身赴任で不在であるようなケースならある意味仕方ない。しかし、子育てや教育に関与する時間があるにも関わらず、あまり父親が協力的でなく、母親だけにその役割負担が過大になっている例が多いのである。ましてや、夫婦関係が希薄化・劣悪化している場合が多いというのも特徴的である。

ひきこもりや不登校になる原因が父親だなんて極端なことは言わないが、その一因になっているように思えて仕方ない。そして、子どもに対して正しい思想や哲学を語ることが出来ない父親が多いのである。勿論、ひきこもりに陥っているケースで父親を心から信頼し尊敬しているというのは極めて少ない。だから、ひきこもりの人々は、相談もできず何をしていいか分からないのである。当然、ひきこもりから離脱することは出来ないし、長期化することが多い。とは言いながら、父親ばかりに責任を押し付けるのも正しくない。

ひきこもり家庭の父親に事情を聞いてみると、子育ての仕方も解らないし子どもを愛する術を知らないと言うのである。勿論、子どもに語れる正しい思想や哲学も習ったことがないというのである。これでは、父親にひきこもりの原因を求めるのは酷である。父親自身も自分の父から教えられていないのである。とは言いながら、ひきこもりになった我が子を救う最大限の努力をしたかというと、そういうようには見えない。ひきこもりの我が子を本当に心配しているのは母親であるし、何とかしたいといつも心を砕いているのは父親よりも母親であるケースが多いのである。

ひきこもりや不登校の相談にいらっしゃるのは、圧倒的に母親が多い。そして、一人で悩んで苦しんでいるのは母親が多い。とは言いながら、ひきこもりをどうして解決していいか解らず苦しんでいるのは両親である。どう対応して解らず、差しさわりのない会話は出来るが、心を開いた本音での対話は出来ないでいる。ひきこもりの当事者は、解決したいと思いながら、どうしていいのか分からず苦しんでいる。相談するところもなく、解決をしてくれるところもないことから、現状に甘んじているのである。社会として、この状況を解決する手立てを見つけなければ、大変なことになる。

 

※「イスキアの郷しらかわ」では、ひきこもりの当事者からの相談、そしてご両親からの相談を受けています。また、どうしたらひきこもりの状態から離脱できるのかの研修を開催しています。さらに、家族と当事者に対するオープンダイアローグ療法を研修させてもらっています。ひきこもりには、このオープンダイアローグが高い効果をあげます。是非とも、ご利用ください。まずは、問い合わせフォームからご相談ください。

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