ひきこもりの本当の原因

ひきこもりという状況に追い込まれてしまい、もがき苦しんでいる人はかなり多いと推測される。厚労省や市町村もその実数の把握が出来ないでいる。ひきこもりという統計上の定義も確立されていないし、ましてやひきこもりを家族がひたすら隠しているのだから、正確な人数を把握できる訳がない。さらに、当事者自身がひきこもりだと認識していないケースも少なくない。障害者として認定されていないし、精神疾患や精神障害でもないから、カウントする術がない。実態を把握できなければ、行政側としては積極的な対応も出来ないのかもしれない。

ひきこもりの子どもを持つ親は、どうしてこんな状況になってしまったのか、原因さえ掴めないでいると思われる。当事者自身もひきこもりになった確かな要因を認識できないでいる。不登校の原因が人間関係だとされているように、ひきこもりの原因も人間関係だとは何となく解ってはいるものの、何故社会に出て行けないのかが判然としない。原因が特定できなければ、対応策を考えることも不可能であろう。社会現象としてひきこもりが増えているという実態は何となく解っているし、何とかしなければならないと行政側は模索しているものの、抜本的対策を考える術を持ち得ていない。

ひきこもりの子どもを持つ親の苦悩は相当なものであろう。長年に渡りひきこもっている子どもを何とかしなければと思いながら、どうしようもない焦りや不安に苦しんでいる。将来は親自身が先に逝くのは間違いないのだから、その時がやってきたらどうなるかという不安は相当なものである。しかし、それ以上に苦しんでいるのは、当事者自身であろう。周りから見ていると、以外と呑気に見えるかもしれないが、ひきこもり本人の苦悩や不安は親以上にあるに違いない。自分の本当の気持ちを分かってくれる者はいないし、誰も助けてくれそうもないのだから、その孤独感は半端ない。

ひきこもりの原因は、人間関係における不都合だと思われているし、本人の資質やその性格にもその要因があると推測されている。親の子育てにおける偏りも指摘されている。親も含めた親族もそう思っているし、社会一般的にもそうだろうと認識されている。確かに、そういう要因やきっかけもあるだろうが、ひきこもりの本当の原因はそれだけではない気がしてならない。どちらかというと、ひきこもりという状況は社会システムの歪みが起こしているのではないだろうか。つまり、ひきこもりというのは個人的な要因によって起きているのではなく、社会全般に責任があるのではないかと思うのである。

ひきこもりの方々は、非常に大きな『生きづらさ』を抱えている。その生きづらさが何によって生じているのか定かでないが、何となく生きづらさを抱えるが故に、社会に出て行けないのであろう。つまり、強烈な生きづらさ故にひきこもりという状況を選ぶしかないのだ。そして、その生きづらさが発生する根源は、この社会そのものにある。誰でもひきこもりになるのではなく、特定の人しかならないのだから、生きづらさの原因は本人にあると思う人も多いだろう。しかし、生きづらさの原因は社会にあるし、その生きづらさを殆どの人は感じているが、我慢して生きているだけなのである。

それじゃ、社会そのものに原因がありそれにより生きづらさを感じるというのならば、その社会の歪みというのは何だろうか。社会というのはひとつのシステムである。様々なコミュニティが寄り集まって形成されている。家族、グループ、学校、地域、職場、市町村、県、様々なコミュニティが存在する。そのコミュニティというのは、共同体なのだから本来はお互いが主体的・自発的に支え合うものである。その構成要素であるそれぞれの人は、特定の人が優位性を持たず、公平で平等でなければならない。そして、基本的にお互いに介入し合わないのが原則である。そうでなければ、システムとして本来の機能を発揮できない。コミュニティも所属する人も自己組織性を失うからである。

家族というコミュニティにおいて、親が子に対してあまりにも優位な立場を保つ為に、所有・支配・制御を繰り返し、指示指導など行き過ぎた介入をしやすい。仲間のグループにおいても特定の人間が支配者として君臨し、他に対する強い介入をする。職場でも同じ状況が起きるし、学校という場所でも歪みが生じている。コミュニティという様々な共同体というのは、お互いが平等で争いのない平和で安心できる場所であるべきなのである。つまり、安心できる『居場所』が家庭・学校・職場・地域にないのである。これでは生きづらさを抱えてひきこもるしかないのである。この社会があまりにも歪んでいるが故に、ひきこもりが起きているのである。

 

※ひきこもりが起きている本当の原因について、イスキアの郷しらかわでは研修を実施しています。そして、ひきこもりの原因が社会システムの歪みにあるとしても、どうすれば生きづらさを抱えながらも乗り越えて行けるのかを、一緒に考えます。地域・職場・学校などのコミュニティを変えるのは容易ではありませんが、少なくても家族というコミュニティを本来あるべき姿に変えることは可能です。そうすることで自分自身が変化できます。ひきこもりの家族に対する研修も実施しています。まずはご相談ください。

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