親族間殺人が5割を超えた訳

警察庁の発表によると、なんと発生した殺人事件のうち、親族間で起きた殺人事件が全体の55%近くに及んでいるらしい。他人に対する殺人事件だったら構わないとは言わないが、親族どうしが何故に殺人事件まで発展するのか、実に不思議である。そう言えば、最近TVのニュースで流れている殺人事件の多くが、親子間、兄弟間、夫婦間、祖父母と孫の間、などで起きている。家族・親族と言えば血縁や婚姻関係がある。他人よりも縁が深い。普通なら、殺人などというおぞましい行為は出来ない筈だ。

親族間殺人が殺人事件全体の5割を超えてしまったのは、2016年からだという。年々割合が増えて、ついには半数以上になってしまったらしい。殺人事件の総件数は年々減少している。それなのに親族間の殺人事件は減らないばかりか増えているということであろう。家族や親族は、本来深い絆で結ばれている。そういう絆があるということは、他人よりもお互いに支え合う力は強い筈である。当然、親族間の愛情が溢れていると思われる。それなのに殺人を実行するほど憎しみを抱えていたというのは理解できないことである。

愛と憎しみは表裏の関係にあるということは、よく知られている事実である。愛があるからこそ憎しみという感情が湧いてくる。愛がないというのは、無関心ということである。親族だからこそ愛が根底にあり、その裏返しである憎しみが殺人に発展したと見られる。憎しみという感情が増幅して、殺人を起こしただけではないケースもあったろう。資産を奪い合ってのトラブルもあったかもしれない。いずれにしても、お互いの尊厳を認め合い、心から敬愛していたとしたら殺人事件にならなかったのは確かである。

親族や家族間において、金銭トラブルが発生するケースが少なくないようである。金銭トラブルは家族間にはよくあることであるが、それが殺人事件にまで発展してしまうのは、よほどのことであろう。家族の絆と金銭のどちらを優先するかというと、普通なら家族の絆が大事だと思うであろう。ところが、最近の家族どうしの殺人事件を分析してみると、お金のために家族を平気で裏切るような人が増えている現実があるようだ。なんとも情けない時代になってしまったみたいである。

家族や親族間における関係性が希薄していて、家族というコミュニティが崩壊していると言われ始めて久しい。本来は支え合うべき家族が、いがみ合い憎しみ合うような関係性になってしまったのである。殺人事件までも起こすというのだから、家族や親族の良好な関係性は既になくなってしまっているのかもしれない。機能不全家族という言葉が言われることが多いが、まさに家族というコミュニティの関係性がなくなり、機能不全に陥っているからこそ、これだけ殺人事件まで発展する家族トラブルが増えたのであろう。

家族という社会システムが崩壊している影響は、殺人事件の増加だけではない。家庭内における様々な問題を起こしているのは、まさに家族というコミュニティが崩壊しているからに他ならない。ひきこもり、不登校、家庭内暴力、パワハラ、セクハラ、モラハラなどが家庭内に増加しているのは、家族システムが機能不全を起こしているからであろう。勿論、これらの問題が起きているのは社会全体の機能不全も影響していることも付け加えておきたい。さらに、家族の中にうつ病などの精神疾患や精神障害が発生するのも、家族コミュニティに問題があることがひとつの要因である。家族という社会システムが壊れていることが、様々な問題を起こしている原因と言えるかもしれない。

何故、家族という社会システムが崩壊してしまったのかというと、関係性が劣悪化してしまったせいであろう。そして、関係性が劣悪化してしまった原因は、家族間における過剰な『介入』によって、一人ひとりの自己組織性(自律性)やオートポイエーシス(自己産出性)の機能不全が引き起こされた為とみられる。親が子どもに対して、圧倒的優位性を持って、必要以上に支配し制御し所有化してしまっているからではないかと思われる。または、逆に愛情をかけないという無視や無関心の状態に置かれたのではないかとみられる。これらの過剰な介入や無視が親子間、夫婦間などで起きていて、良好な関係性が壊れているように感じられる。関係性の大切さを再認識して、家族というコミュニティを再生させないと、家族間のトラブルや殺人事件はなくならないと思われる。

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