何のために働くのか

「あなたは何のために働くのですか」と問われて、10人中9人は生活のために働くと答えることであろう。当然である。昔から働くもの食うべからずと言って、有り余る財産がなければ、人は生活をするために働くのが普通である。10人中1人ぐらいは生きがいのためとか、健康のためとか、またはいろんな人と交流を深め見識を広めたいという人もいるかもしれない。とは言いながら、やはり収入が目当てである部分も必ずあるだろう。収入が不要というなら、収入のないNPOやボランティアで活動するに違いない。

以前、人が働く目的は収入だけのためだけではない。人間として自己成長したり自己実現を目指して働いたりするという意味もあるのではと問題提起をしたら、きれいごとを言うんじゃないとお叱りのコメントをいただいたことがある。確かに、そんなことを言っていたら出世競争に乗り遅れてしまうとか、いつまで経っても給与収入が増えないで貧しい生活になるかもしれない。ましてや、現代のように非正規雇用の低賃金で、不安定な立場でぎりぎりの生活を強いられてしまっている若者にとっては、そんな余裕なんてないと怒られるかもしれない。

ひと時代昔のように、ほとんどの労働者が正規労働者であり、生涯雇用制度に守られて働いていれば、生活のためだけでなく自己実現を目指すという余裕があったのかもしれない。ましてや、あの時代は高度成長時代、企業も毎年のように最高利益を更新して、毎年ベースアップをしていたのだから労働者も安心して働けた。そんな恵まれた時代だから、収入は確保されるのが当然だから、生活のために働くという意識はなくても良かったとも言える。ところが現代は、明日の労働と収入さえ不安なのだから、生活のために働かざるを得ないというのも仕方ないであろう。

それでもあえて言いたいのであるが、働く意味というのはもっと他にもあるような気がしてならない。働く意味や生きる意味というのは、これしかないなどと乱暴なことを言うつもりはない。人それぞれに労働観を持っているだろうし、人生観だっていろいろであると思う。しかしながら、生活のためだけに働くとか自分のためだけに生きるというのでは、少し情けないような気がするのである。人間がそもそも何のために生まれてきたのかということを深く洞察すれば、見えてくる真理というものもあるだろう。そういうこともせずに、目の前の生活のことだけに意識がとらわれるというのは、可哀そうな気がする。

この世の中では、働きづらくて生きづらいと思っている人が多いに違いない。何故かというと、行き過ぎた競争意識があるうえに、細かくて厳しい人事評価制度に縛られているという影響がある。また、あまりにも労働環境が厳しくて、上司から成果を上げろと叱咤されている。さらには、いくら頑張っても報われないという諦め感も強く感じる。なにしろ、日本人の従業員満足度は極めて低いし、多くの人が働きがいを感じられないというのである。毎日、神経をすり減らし、我が身体をむち打ち、やっと通勤している有様なのである。

さて、日本人の従業員満足度が低いというが、それはどうしであろうか。多くの人が誤解していることなのだが、従業員満足度というと待遇や労働環境のこと、そして仕事に対するモチベーションだと思っている人が多い。確かに、それも一部である。それよりも、従業員満足度の大切な部分は、実は顧客の満足に対する貢献度と職場と仲間にどれだけ貢献できたかである。この貢献意識とそれに対する感謝が大きいときに、従業員員満足度がとてつもなく高まるし、さらにはこういう意識で働いて自分が人間として成長できたなと実感した時に従業員満足を感じるのである。もっと言えば、職場に貢献する優秀な人材を育てられた時も大きな満足感を得られるのである。

ということは、日本人の労働者の多くがこういった、他者に対する貢献をしていないということになる。職場に愛着や信頼を感じるか?という質問をすると、日本人のたった7%しか感じないというのだから、当然であろう。先進国の中では、最低の数字である。非正規労働者を増やして労働コストを下げるという国の制度設計も悪いし、従業員満足度を高める努力をしてこなかった使用者側にも責任があろう。だとしても、労働者自身にもまったく責任がないとは言い切れないような気がする。もう一度、何のために働くのかということを深く考え直し、そして働きがいや従業員満足度が高い職場を選ぶという意識を持ってみてはどうだろうか。単に報酬が多くて休みが多い職場だけを選択するのではなくて、愛着や信頼を得られるような職場で、しかも自分を人間として大きく成長させてくれるというような基準で選んでみるのもよいのではなかろうか。

 

※イスキアの郷しらかわでは、社員満足度を高めるための教育研修を実施しています。モチベーションを上げて充実した働き方をするにはどうしたらよいかの研修をしています。問い合わせフォームから、ご質問にお答えします。

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