ひきこもりが解決する方法

どんなにこじれてしまったひきこもりや不登校でも解決する共通の方法なんて、絶対にないと思っている人が殆どであろう。確かに、ひきこもりや不登校の原因やきっかけはそれぞれ違っているし、当事者や家族の考え方や置かれた環境も違っているのだから、そう思うのも無理はない。高名な精神科医やカウンセラーにも相談して治療を受けたし、改善に効果あるといういろんな方法を試してみたことであろう。しかし、今度は改善するかもしれないという期待は、残念ながらことごとく裏切られたに違いない。ましてや、ひきこもりや不登校の子どもをカウンセリングや精神科医の元に連れて行くことさえ困難なのだから、当然である。

ひきこもりや不登校の原因が、何となく親と子育てにあると思っている保護者が多いことだろう。その判断は、あながち間違いではないと思われる。しかし、それがすべての原因ではない。もっと複雑な原因やきっかけが絡み合っている。その絡み合った糸をほどけさせて、二度と絡み合わないようにすることが求められている。本当の原因を探り出して、その原因をひとつずつ根気よくつぶすしかないと、思い込んでいる人も多いに違いない。精神科医やカウンセラーはそういうふうに思っている。だからこそ、家族のカウンセリングを重要視している。しかし、そんな家族カウンセリングをいくら受けたところで、改善しないことが多いのも事実である。

ましてや、家族カウンセリングを受けるケースであっても、父親が自ら進んでカウンセリングを受けることはまずない。母親が家族カウンセリングを受けて、父親も一緒に受けるようにカウンセラーから勧められても、断ることが多い。よしんば、父親がカウンセリングを受けたとしても、カウンセラーの指示や指導に素直に従うことはないであろう。自分には我が子のひきこもりの原因がないと思い込んでいるし、母親が原因だと思い込みたい自分がいるからである。さらには、既に離婚して父親が不在だというケースも少なくない。

家族カウンセリングを行うカウンセラーや精神科医にも、家族カウンセリングが上手く行かない原因がありそうだ。まず、カウンセラーや精神科医というのは、子どもがひきこもりや不登校になった原因を追究したがる傾向がある。カウンセラーや精神科医というのは、何か家族の誰かに問題があると、その原因を分析して問題解決をしたがるのである。そして、家族の誰それにこういう問題があって、これがひきこもりの原因なので、それを解決しなさいと深く介入し、指導を行う。これが絶対にやってはいけないことなのである。

何故いけないかというと、そのように指摘されて指導された人間の気持ちになってみるがいい。そんなことを言われて、「はいそうですか、私がいけなかったのですか、直しますね」と素直に認めて受け容れる人がいるであろうか。そんな謙虚で素直な人なんて、絶対にいない。特にひきこもりを起こしている子どもの保護者は、そんなことは認めたがらない。もし、素直に認めて「解りました、努力します」と答えたとしても、それはけっして本心からではない。その証拠に、それ以降はカウンセラーの言うことを聞かなくなるし、行かなくなるに違いない。家族カウンセリングが失敗する典型例である。

人間というのは、自分に非があることを他人から指摘されるのを極端に嫌うものである。ましてや、図星のことを指摘されるのは怖いことだ。特に、変なプライドを持つ人間ほど、この傾向が強い。社会的な地位や名誉を持つ人間や教養の高い人ほど、他人の指摘に反抗したがる。こんなことを赤の他人から指摘されたとしたら、それを素直に聞き入れるようなおめでたい人間なんていない。だから、絶対にそんなことを指摘してはならないし、深く介入し、その保護者を無理に変えようとしてはならないのである。

ひきこもりや不登校をしてきた当事者は勿論のこと、その保護者たちは支配され制御されることを嫌う。それは人間なら当たり前のことである。全き自由でありたいと思うし、誰かの操り人形で生きるなんて、まっぴらご免である。ましてや、人間という生き物は、本来アクティビティーを持つ生き物である。誰からか命じられて行動するのは苦手で、主体性・自発性・自主性を自ら発揮したいのである。故に、当事者と保護者が自分のこだわりや誤りに気づき、自ら変化することを選択したいと本心から思うようになれば、ひきこもりも解決する道筋が見えてくる。現在考えられるその唯一の方法とは、オープンダイアローグ(開かれた対話)という手法である。

 

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