仕事で失敗や挫折をする訳

仕事は人間を大きく成長させてくれると言うが、確かにそうだと思う。行政などの官公庁の仕事でも人間は成長するが、やはり民間ビジネスにおける厳しい仕事こそが大きな成長をさせてくれるような気がする。最近は、民間ビジネスを嫌ってNPO法人などに勤務したがる若者が増えているし、独立して起業したがる人も少なくない。好きでもない仕事を無理やり押し付けられて、しかもパワハラ・モラハラやセクハラにさらされる民間ビジネスの職場も多い。だとしても、民間ビジネスの厳しい環境で、失敗や挫折を乗り越えてこそ人間は成長するのではないだろうか。

行政や独立行政法人などにおいて、失敗や挫折を繰り返すこともあるだろう。しかし、その責任を痛感して、自分の進退にまで発展することはまずない。しかし、民間ビジネスの世界では、会社・組織に多大な損失を与えたとしたら、本人の進退や降格につながるケースが多い。大きな失敗や挫折をして、その責任の重さに耐えきれず、メンタルを病んでしまうことも少なくない。だからこそ、民間ビジネスの厳しさを耐えて乗り越えてきた人間は、強い精神力と忍耐力を獲得できるのではないかと思われる。

とは言いながら、出来ることなら失敗や挫折は避けたいし、ましてや取り返しのつかないような大きな失態は演じたくない。大事な顧客を失ったり、多大な損失を与えたりするようなことは、ビジネスマンとしては絶対にしたくないものである。企業内のいろんな社員を見ていると、何度も大きな失敗を繰り返す人と、小さなミスはするけれど大きな失態はまったくしない人がいることに気付く。どうして、大きな失敗を繰り返す人としない人がいるのだろうか。

失敗や挫折を繰り返す人には、明らかな特徴がある。それは、非常に独善的であるという点である。表面的には、会社に対して忠誠心を持っているように振る舞っているが、自分の地位や名誉に固執し、自分にとって損か得かで行動を決めがちである。したがって、自分の利害が一番であり、他人がどうなろうと知らんぷりの態度を取りがちである。企業内も競争社会である。出世競争もあるし、手柄を立てたいというのは人情であるが、あまりにも自己の利益にこだわる傾向にある社員が、どういう訳か失敗を繰り返す。

大きな失敗や挫折を繰り返す人は、他人の気持ちに寄り添うことが苦手なようである。つまり、同僚や部下の気持ちを推し量ることが不得意である。相手の気持ちになり切って、自分のことのように共感することが出来ないから、周りの人から好かれない。同僚や部下に対して冷たいので、敬愛されないし信頼されない傾向にある。端的に言えば、良好な関係性を作ることが苦手なのである。当然、顧客や取引先との関係性も劣悪になることが多い。クレームや解約になるケースも少なくない。

会社や組織というのは、ひとつの完全なシステムである。構成要素である部門や社員が、全体である会社を支えている。そして、構成要素である部門や社員は、会社というシステム全体を最適化するように最大の努力をしながら働く。全社最適を目指すのである。当然、会社だけの最適を目指すだけでなく、社業を通して地域社会や社会全体の幸福や豊かさにも貢献する。つまり、全体最適を目指して活動しているのがシステムとしての企業であり、それを支える社員も全体最適を目指すべきなのである。そして、全体最適を実現するには、構成要素どうしの関係性が何よりも大切なのである。

ところが独善的で自分の損得を第一義的に考えている社員は、個人最適を目指しているのである。全体最適と関係性というシステム思考に反する行動をするのだから、不適合を起こすのは当然である。つまり、失敗や挫折という不適合を起こすのは、システム思考という哲学に反するからなのである。このように個別最適を目指す社員が出世して経営トップになった企業は、間違いなく大失態を起こしたり経営破綻したりする。東芝や神戸製鋼が失敗したのは、これが原因である。失敗や挫折を避けるには、全体最適と関係性を重視するシステム思考の哲学に基づいて行動すれば良いという結論になる。

 

※イスキアの郷しらかわでは、失敗や挫折を繰り返す社員の教育研修をしています。システム思考の哲学を学習することは勿論のこと、自己マスタリーという大切な人間成長の基本となる原則を学びます。真のリーダーシップを獲得するための研修も充実しています。MIT上級講師のピーター・センゲ氏が提唱しているシステム思考を深く理解し、「学習する組織」を創造するためのサポートをしています。

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