センス・オブ・ワンダー

センス・オブ・ワンダーという言葉がある。『沈黙の春』という環境問題を世界で最初に提言した本を著したレイチェル・カーソンが提唱した言葉だ。同名で本にもなっているし、ドキュメンタリー映画もある。日本語に訳すると、「驚きの感性」となる。何のことだか解りにくいが、自然体験においては基本となる感性である。自然を深く観察していると、驚くような景観、植物、動物などの目を見張るような美しさに出会うことがある。その際に、センス・オブ・ワンダーがないと何も感じないし、素通りしてしまうというのである。

センス・オブ・ワンダーというのは、自然体験をする際にはなくてはならない大切な感性だと彼女は言っている。何故ならば、同じ美しい花を見ても豊かな感性を持つ人と持たない人では感じ方が違うからである。登山道の傍らに咲いている可愛らしい花を見ても、感性を持たない人は見過ごしてしまう。豊かな感性を持つ人は、誰も気づかないような小さな花を見つけて心が動き、じっと見つめてその美しさを愛でる。名前も知らない路傍の花にも感動するような感受性が必要であると言っている。

レイチェル・カーソンという女性は、沈黙の春という著書で農薬使用の危険性について述べている。農薬というのは、自然界の動植物を壊滅させてしまうリスクを持つ。農薬によって小鳥たちが死滅してしまい、春がやってきても小鳥のさえずりが聞こえなくなり、もはやサイレントスプリング(沈黙の春)になってしまったと嘆いている。彼女の農薬の過剰使用についての提言は、多くの環境保護活動家を生み出した。世界の環境保護活動は、彼女の著作から始まったと言っても過言ではない。

そんなレイチェル・カーソンは、自然をこよなく愛していた。彼女は自然が豊かな場所に家を持って、家の回りの野原をいつも散策していたらしい。彼女は結婚もせず、子どもがいなかったという。時折、甥が訪ねてきて、彼と一緒に自然の中を散策していた。自然の中に咲いている花々やさえずる小鳥たちの美しさを、甥と共に楽しんでいたのである。その際に、センス・オブ・ワンダーという驚きの感性こそが必要だと言うのである。それを持っていないと、美しいものを美しいと感じないからだという。

美しいものを美しいと感じることがなければ、逆に醜いものや汚いものを見分けることも出来なくなる。ということは、大人になってから醜いものや汚いものを判別できなくなるから、そのような詰まらないものに心を奪われてしまう危険性を持つのである。レイチェル・カーソンは、大人になって過剰な欲望や本能に心を惑わされ、人間として生きるべき本質から遠ざかってしまうのは、このセンス・オブ・ワンダーが育っていないからだと言い切っている。心が疲れて折れてしまい、生きる気力を失ってしまうのも、この驚きの感性が乏しいからだと言うのである。

このセンス・オブ・ワンダーが子どもの心に芽生えるには、ただ自然体験をすればよい訳ではないと説いている。その自然体験に際して、傍らにこのセンス・オブ・ワンダーを発揮できる大人が必要だと言うのである。自然体験をする子どもたちの傍に付いていて、路傍の何気ない花の美しさに驚き、心から感動することが肝要らしい。その際、花の美しさをどのように表現するのかも大事である。ただ単に美しいと言うのではなく、何故美しいと感じるのか、美しさをどのように表現するのかが大切だと説いている。傍らにいる大人が、心が打ち震えるほどの感動をして、それが身体いっぱいに溢れるほどの表現をして、子どもの心にも響かせなくてはならないのである。

登山ガイドや自然ガイドをしている人は沢山いる。しかし、このセンス・オブ・ワンダーをこよなく発揮している人はどれだけいるだろうか。子どもたちに、センス・オブ・ワンダーの感性を育むことが出来るガイドは、そんなに多くはない筈である。まずは、自分が自然に接した時にどれほどの感動が出来るのかということと、それを子どもの心に大きく響くような豊かな表現を出来るかどうかが重要である。子どもに単に美しさを伝えるだけでなく、それが何故美しいのか、美しい心というのはどういうものかを豊かな表現力で、しかも物語性を持たせながら伝える必要があるのだ。このレベルまで子どもたちの感性を育める自然ガイドを、選びたいものである。

 

※イスキアの郷しらかわでは、センス・オブ・ワンダーを育める自然ガイドと登山ガイドをさせてもらっています。子どものうちであればこの驚きの感性を育成しやすいのですが、若者になってからでもこの感受性を豊かに育むことも可能です。心が疲れて折れてしまわれた方は、このセンス・オブ・ワンダーを取り戻すために、いらしてみてください。自然体験をご一緒しましょう。経験豊かな自然・登山ガイドのプロが案内します。

 

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