過労死を二度と起こさないために

野村不動産の社員が過労死をしたというニュースが流れた。それも、違法の裁量労働制をしていたと摘発されたのである。本来、裁量労働制という制度で認められているのは、研究職や技術職の専門的な職種と企画開発のような特殊な職種である。今回、違法だと摘発された野村不動産のケースは、主に営業をしていたのにも関わらず、無理やり企画開発職だと偽って労働契約を結んでいたと見られている。こんな誤魔化しが、野村不動産では日常化しているのである。なんと6割近い社員が裁量労働制を強いられているというから驚きである。

そもそも、裁量労働制というのは自らが労働時間を設定できて、出社時刻と退社時刻が決められていない筈である。ところが、実際には他の社員と同じ時刻に出社することが決められていて、しかも退社時刻の前に退社することは認めていられない例が多い。労働量と業務量も自分で設定できる筈なのに、上司からこれだけの業務をこなすようにと指示されているケースが殆どである。つまり、現在の裁量労働制の大半が違法状態になっているのである。この裁量労働制が、残業手当を少なくするための隠れ蓑として利用されているのである。

こんな酷い実態なのに、政府と自民党は経営者側からの要求を鵜呑みにして、裁量労働制を営業職まで広げようとしたのである。つまり、内閣と自民党は違法行為だと知りながらそれを見逃すだけでなく、その違法行為を助長するような裁量労働制の改悪までも目論んだのである。ということは、過労死を益々増加させるような悪法を制定しようとしたのである。未必の殺人行為といえるような暴挙に、内閣が手を貸そうとしたと言えよう。経営者と政府自民党は、こんな悪法を通そうとしていて、それに行政職も協力してしまったと想像できる。

それにしても、こんな違法状態を見逃している各労働局と労働基準監督署は、酷い職務怠慢だと言える。過労死が起きてから慌てて摘発するのであれば、労働局や労働基準監督署なんて不要である。こういう違法状態を野放しするだけでなく、本来はこんな状況になる前に予防する役目を果たすべきであろう。労働局や労働基準監督署は、各企業に対して立ち入り調査をする権限が与えられている。裁量労働制の導入に対して、しっかりと検証してから認定すべきであろう。しかし、このように違法性を見逃している実態があるのだ。

日本国憲法の基本的人権の尊重と労働法というのは、弱い立場である労働者の正当な権利を守る為に制定されている。そして、厚労省、労働局、労働基準監督署というのは、その労働者の正当な権利が侵害されないように厳しく監視すると共に、違法行為を起こさないように経営者側に対して厳しく指導監督する役目を負っているのである。しかるに、厚労省は政府と経営者側に有利に働くような調査結果になるように報告書を偽造したと見られている。こんな暴挙を絶対に許してはならないのである。

日本国憲法は三権分立を謳っている。立法、司法、行政が完全に独立して、それぞれの誤作動や暴走を牽制するシステムになっている。ところが、最近の政府自民党の言動は、立法と行政がそれぞれに牽制するどこか、お互いに協力し合っているとしか思えない。これでは、国民の幸福や福祉の向上に寄与しないどころか、国民に過酷で不幸な生活を強いるような暴走に陥っていると考えられる。この誤った裁量労働制による過労死という未必の殺人行為に現れていると言えよう。過労死したNHKの女性記者のような犠牲者が、これから益々増えてしまうに違いない。

過酷な長時間労働は、労働者の健康を損なうだけでなく、その勤労意欲を大きく削いでしまう。そして、労働効率や生産性を低下させてしまう。企業側に取っても、マイナス面が大きいのである。家庭においても、父親から家事育児参加の時間を奪ってしまうので、母親の負担が増えてしまいストレスが多大になり、様々な家庭問題を起こす要因になる。労働者が趣味やスポーツの時間も取れなくなることで、ストレス解消も出来なくなり心身の障害が起きる。休職や離職に追い込まれひきこもりが起きてしまうし、子どもの不登校も起きかねない。つまり、過酷な長時間労働は、国家的な損失に繋がるのである。過労死が起きるような酷い労働環境を止めることが出来るのは、投票権を持つ我々国民しかいないことを認識すべきであろう。

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