働き方改革は労働者の立場で

働き方改革は安倍内閣の目玉政策として、進められている。連日、国会の予算委員会で活発な法案の集中審議が展開されている。これからの日本の労働政策の根幹にかかる重要課題であるが、どうやら労働者に配慮した働き方改革ではなく、雇用側にとって有利な働き方改革になっているような気がする。その最たるものは、裁量労働制度の業種拡大であろう。その討論の根拠となるデータが、明らかにねつ造されているのではないかとの疑いが明らかになった。裁量労働制は働き方改革にどうして必要なのか、まったく理解できない。

そもそも裁量労働制というのは、残業手当を削減する目的の為に制定されたものである。労働者にとっては、メリットはまったくなく、雇用側にとっては有難い労働制度である。いくら働かせても、残業手当を定額しか支払う必要がないのだから、益々長時間労働になるのは当たり前である。裁量労働制は、本来は労働者が労働時間を決める裁量を認められているのが基本となる。しかし、実際には労働者に自由に労働時間を決める裁量は認めてられていないのである。その前提が棄損しているにも関わらず、裁量労働制が認められていること自体が憲法違反であり法律違反なのである。

このコンプライアンス違反の実態は、労使共に把握しているだけでなく、厚労省・労働局・労基署は完全に把握しているのに、見て見ないふりをしているのである。だから、裁量労働制の実態調査をしていないのである。それなのに、この裁量労働制をさらに広げるという無茶な政策を推し進めようとしているというのは、労働者を見殺しにするようなものである。過労死が問題になっているのに、益々過労死が増えるに違いない。日本の労働環境は、欧米から見ると酷い状況にあるが、もっと劣悪なものになることであろう。

政府が推し進める働き方改革は、労働者不足を解消する為の政策である。労働者が勤労意識を高揚できると共に、働きがいをおおいに感じることができ、しかも余裕のある働き方ができることで、家族の触れ合いが出来る余暇の時間が持てて、父母共に子育てがしやすい環境を持てる為に働き方改革をするべきである。ところが、どういう訳かその真逆の働き方改革の法律改悪になっているのである。これでは、労働者が子育てや介護に充てる時間が益々減少してしまい、少子化はどんどん進んでしまうことであろう。

現在、多くの若いママさんたちはシングルマザーになるという選択をしている。その理由は、夫が毎日朝早くから深夜まで仕事に専念し、休日まで出勤して、子育てや家事全般が妻だけの役割になっているからである。そのため、子どもの世話だけでなく夫の世話までさせられて、目いっぱいの状況にさせられている。それは専業主婦だけでなく、共働きの家庭でも同じように妻だけが頑張っている状況にある。仕事で目いっぱいになっている夫は、妻の大変さを解ってくれないし、愚痴も聞いてくれない。これでは、一人親のほうが精神的には楽だと、離婚してしまうのである。

こんなふうにシングルマザーを作り出してしまっているのは、日本の労働環境が悪いからである。日本人のサービス業や事務管理業務における生産性が、極めて低いというのは、長時間労働によるものである。人間というのは、毎日労働時間が長くて休日もろくに取れないと、労働意欲が低下するし能力低下が起きる。それ故に長時間労働にならざるを得なくなっていると言えよう。さらに、基準労働賃金が極めて安いものだから、残業手当が生活賃金になっているのである。こんな労働実態を作ってしまったのは、政府による労働政策の無策からである。日本の労働政策が、企業側の利益を守るためのものになっているからこんな酷い状況になっているのだ。

本来働き方改革というのは、労働者の立場で進めるべきものである。経済優先ではなくて、人間優先でなくてはならない。政治というものは、強いものの味方になってはならない。常に社会的弱者に配慮した政治を進める責任が、政治家と行政職に求められる。安倍内閣は、経済優先の政策を推し進めていて、労働者や国民の利益確保とか福祉向上を無視しているとしか思えない。自分のすべてを仕事にかけるような働き方を労働者に強いてはならない。仕事だけでなく、家庭や地域での活躍が可能になるような働き方改革こそが求められているといえよう。そうすれば少子化も防げるし、生産性も高まるし、働きがいや生きがいの持てる働き方が出来るに違いない。

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