行政主導の地方創生が成功しない訳

起業女子ともてはやされたり、地方で起業して街おこしという甘言に誘われて都会から移住したりする若者がいる。実際に、その中でどれほどの人が成功を収めているのだろうか。成功という基準があいまいだから、何とも言えないであろうが、起業して成功しているというならば、少なくても自分自身の手取り収入が都会での平均給与程度かそれを上回っているレベルであろう。まあレベルを下げて、地方における平均給与だとしても、経費を差し引いた手取り収入が年額500万円くらいは欲しいところである。ところが、これだけの収益を上げられている地方における起業者は、殆どいないのが実情である。

全然いない訳ではなくて、しっかりした戦略とビジネスプランを実践して会社組織にして頑張っている人もいる。農業法人を設立して米の生産とおむすびの販売を全国展開をしている人もいるし、地方でIT産業を起業して成功した人がいない訳ではない。しかし、圧倒的に少数であるのも事実である。何故、地方創生の起業成功例が少ないのかというと、あくまでも補助金や委託事業頼みで起業して、その委託や補助金がなくなってしまうと急激に事業が萎んでしまうからである。似非コンサルタントに踊らされて、創業塾なるもので洗脳されて起業してみたはいいけれど、何年か後には倒産という例が実に多いのである。

NPO法人の例を見てみれば、一目瞭然である。NPO法人で成功しているのは、障害者自立支援法による公的収入を得ている処や行政からの委託事業で運営している処だけである。公的な収入に頼らず、民間を相手にして自主的財源をしっかりと確保して、しかも職員に年間500万円以上の給与を支払っているNPO法人は皆無である。法人経営というのは、そんなに甘いものではないということである。なにしろ、経営者として素人の人間が、ビジネスの基本も知らずに法人経営を行うというのだから無茶にもほどがある。

大学で、経営学や経済学を学んだのだから、会社経営は何とかなるだろうという甘い期待は、一切通じない。経営戦略書、経営計画書、財務計画書などをしっかりと作ることが出来て、しかもマーケティングの基本を熟知して、真のイノベーションを起こせるというならば話は別である。しかし、現実としてそんな起業女子はいないし、地方創生で応募してくる若者は、マーケティングのイロハさえ知らない。ましてや、地方創生でコンサルタントとして雇われる人物は、都会で役に立たなくて仕方なく地方にやって来た三流のコンサルである。どうみたって成功する筈がない。

このように地方創生で予算化された有難いお金は、無残にもどぶに捨てられてしまうのである。それじゃ、地方で起業しても駄目なのかというと、けっしてそうではない。しっかりとビジネスの基本を勉強して、余裕のある資金計画を立て、イノベーションを起こすことが出来たら起業は成功するに違いない。まずイノベーションというと、多くの人々は勘違いしている。ここから間違っている。大企業における技術革新をイノベーションと呼ぶと思い込んでいるが、まったく違っている。そこから学び直さないといけないのである。

イノベーションとはJ・A・シュンペーターが唱えた経営発展論である。その基軸となる考え方は、「新しい統合」である。何を統合するのかというと、違う商品価値どうしを結びつけることにより新しい商品価値を創ったり、違う分野の生産価値どうしを統合して新たな生産価値を生み出したりすることである。簡単に言うと、異質なものと異質なものを組み合わせることで新たな価値を創造することであり、そしてそれにより新たな顧客を生み出すということでもある。これがイノベーションであり、スマートフォンやフェイスブックはその成功例だと言われている。

地方でも既にイノベーションを起こしていると、胸を張る行政マンもいる。グリーンツーリズムや農産物の六次化である。確かにある意味、農業と観光という異質なものを統合したグリーンツーリズムや、農業・加工業・販売を統合した六次化はイノベーションだと言えなくもない。しかし、それにより新たな顧客を生み出せたのかと問うと、残念ながら顧客創造は果たしていないのである。それは、マーケティングにおける基本戦略の甘さによるものであろう。農業関係者や行政関係者というのは、プロダクトアウトという考え方に固執していて、マーケットインという価値観を併用できなかったのである。さらに、デザイン思考という視点も欠如している。それ故に新しい顧客を生み出せなかったのであろう。このようなビジネスの基本さえ把握していないのだから、これからも残念ながら行政主導の地方創生は成功しないに違いない。

 

※イスキアの郷しらかわでは、地方で起業女子として活躍したい人や、地方において起業による町まちづくりをしてみたいと計画している方を対象に、イノベーションやマーケティング、デザイン思考の勉強会をさせてもらっています。希望者には、個別の研修会(無料)をさせてもらってもかまいません。是非、ご相談ください。

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