見えない暴力に苦しむ妻

暴力事件が止まることがない相撲界であるが、暴力は困ったことに社会全般に蔓延している。学校教育現場にもあるし、企業内や行政組織内にも存在する。そして、家庭内にも暴力事案が起きているのである。この暴力という定義であるが、多くの人々は物理的な力を身体に加えたものと思っている。しかし、暴言やネグレクトなども立派な暴力であろう。パワハラ、セクハラ、モラハラなどのハラスメントは、もはや暴力として定義しても差し支えない筈である。心をいたく傷つけるのだから、被害者にとっては怖い暴力だと断言できる。

家庭内には、もっと恐ろしい見えない暴力が存在していることを認識している人は少ない。それは、夫から妻に対する卑怯で悲惨な暴力である。日常的にこの見えない暴力が妻を痛めつけている。妻とのコミュニケーションの中で繰り返される無言、無視、不機嫌な態度がそれである。そんなことが暴力とは言えないだろうと認識しているのは、夫ばかりではない。妻もまた、そんなことは暴力とは呼べないと思っているに違いない。始末に負えないことに、双方が暴力だと思っていないから、反省もせず毎日のように繰り返されるのである。だから、ボクシングにおけるボディブローのように、じわじわと妻の心を痛め続けるのである。

無言、無視、不機嫌な態度を夫がするのは、自分が悪いからだと妻は自らを責める。またもや、夫を怒らせてしまったのは自分の何がいけなかったのかと、自分を振り返り反省する。そして、自分さえ我慢すればすべてが上手く行くのだからと、例え夫が悪くても自分の言いたいことも心に仕舞い込むのである。女性というのは、微妙な表情やそぶりで相手の心を読むことができる。一方、男性はそういう感情の機微を推測できない鈍感な生き物である。だから、夫の微妙な目の動きや表情の変化を、妻は素早く敏感に感じ取り、機嫌を損なわないように努力する。ところが、妻の心が傷ついていることを感じ取れない夫は、益々見えない暴力を奮い続けることになる。

家庭内の日々のコミュニケーションを振り返ってみてほしい。妻は、お互いの気持ちを理解しようと、なるべく会話をしようと夫に話しかける。ところが夫は、男性脳を持っているから、女性脳とは違い一度に二つのことが出来ない。新聞を読んでいるとかTVを観ていると、妻との会話に集中できない。パソコンに集中していると、他のことが出来ないのが男性脳の特徴なのである。当然、妻の会話は殆ど聞いていないということが起きる。聞いていたとしても、上の空である。そうすると、ねえ聞いているの!と妻は怒る。夫は、黙ってしまい、不機嫌な態度を取る。これが、見えない暴力の一端である。

男性は、しばらく会話などしなくてもストレスは感じないし、問題なく生きられる。しかし、女性は社会性の高い生き物であるから、会話をしていないとストレスが高まるし、黙ったままの夫婦生活には耐えられない。夫が職場から帰宅するのを待ちかねていて、いろいろとその日の出来事や心配事について話したいのである。それを、無視、無言、不機嫌な態度で阻止されたら、妻には大変な暴力になってしまうのである。妻が病気になるのは、夫が原因だとして、『夫源病』と名付けられたが、目に見える暴力や暴言だけでなく、目に見えない悲惨な暴力の影響も大きいと言わざるを得ない。

男性と言うのは、非常に身勝手な生き物である。特に婚姻関係を結ぶと、妻は自分の所有物だと勘違いし、自分にとって都合のよい行動を妻に強いることが多い。それがかなわないと見るや、目に見える暴力や暴言によって、妻を支配しコントロールしようとする。さらに、陰湿な目に見えない暴力によってそれを強化する。特に独占欲の強い男性は、他の異性との接触や深い関係を嫌い、異性と同席する会合や懇親会に出さなくなるケースが多い。夫は、一人の人間としての妻の尊厳を、一切認めようとしないのである。

妻は、このような見えない暴力に屈してはならない。ましてや、夫がそういう態度を取るのは、自分が悪いからだと自らを責めてはならない。無言、無視、不機嫌な態度を取るほうが絶対的に悪いのであり、卑怯なのである。妻を心から愛するのであれば、夫はきちんとした言葉で説明すべきであろう。妻の言いたいこと訴えたいことを解ろうとする努力を惜しまず、妻の会話を真剣に傾聴し共感しなくてはならない。そして大事なのは、妻の気持ちになり切って会話することである。妻の悲しみを自分のことのように悲しみ、涙のひとつもこぼすくらいの態度を取ってほしい。そうすれば、見えない暴力を奮うこともなくなるに違いない。

 

※イスキアの郷しらかわでは、このような見えない暴力も含めて、夫からの暴力についての無料相談を受けています。または、このような暴力を未然に防ぐ対策の研修を承ります。遠慮なく「問い合わせフォーム」からご相談ください。

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