引きこもりに対する父親の役割

引きこもりの子どもをどう扱ってよいか解らず迷っている両親は、相当に多いに違いない。叱って無理やり外に連れ出すのか、医療機関や専門家に任せるのが良いのか、それとも優しく諭すのがいいのか、そっと見守るしか術がないのか、悩んでいることであろう。勿論、同じ引きこもりの状態にあっても、子どもの性格から成育環境も含めて、みんな違っている。それゆえ、画一的な対応というか、正解だと言えるような対応の仕方なんてないと思っている人も少なくないと思われる。

引きこもりの子どもは、親にしてみれば実に扱いにくいことだろう。何を考えているか解らないし、予想がつかない行動をしがちである。また、気分もその日その時によって変化するし、突然キレたり怒り出したりするものだから、腫れ物に触るような対応をせざるを得ない。とは言いながら、親としてみればどうにかして社会復帰してもらいたい思いが強いことであろう。何故なら、どうみたって自分達のほうが先にお墓に行くことになる。自分たちが居なくなったらと思うと、その後の子どもの生活が不安でならないのは当然である。

引きこもりの子どもは、自分の人生や将来をどのように考えているのであろうか。本人に確認した経験はないものの、おそらくは今のままで良いとは考えていないのは確かであろう。そして、将来の不安も親と同等かそれ以上の不安を持っているに違いない。何とか現状を打破したいと思いながら、どうあがいても身体が動かないのである。社会復帰してほしいという親の願いは、痛いほど認識しているし、親が多大な不安を持っていることも先刻承知している。ところが、親が不安なればなるほど、不思議と子どもの不安も増幅してしまい、お互いにその不安を強化しあってしまうのだと思われる。

引きこもりが起きてしまっているのは、親に原因や責任がある訳ではない。勿論、本人にも責任はない。生きづらい世の中にしてしまっている我々の社会全体に責任があるのだと思っている。学校、地域、企業、職場に安心な居場所がないのである。家庭にも居場所がないけれど、自分の部屋だけがかろうじて認められるべき居場所なのだろう。引きこもりになってしまったのは、今の社会における人々の価値観が劣悪だからである。客観的合理性をとことん追求していて、行き過ぎた競争原理により関係性が破綻し、コミュニティが崩壊してしまっているこの社会には、安心する居場所がないに違いない。

勿論、家庭における父親もまた、そんな価値観に支配されてしまっている。それ故に、家族の関係性が希薄化してしまっている。家族の関係性が悪いのは、父親に正しい哲学や価値観がないからであると考えられる。しかし、そうなってしまったのも父親が誰からも正しい哲学や価値観を教えられていないのだから当然であるし、責められない。明治維新以降の近代教育導入から、正しい思想哲学の教育を排除し、それが戦後にさらに強化されてしまったのだ。親からもそして学校でも価値観教育がなくなってしまったことにより、人々は生きづらさを抱えてしまったのだと確信している。

それじゃ、引きこもりの父親はどうしたらいいのかというと、今からでも遅くはないから正しい価値観を学ぶことを勧めたい。それもこの世の真理に基づく正しくて普遍的な価値観を学ぶべきと考える。この世の中で、「父親学」というものが今必要なのではないか思うのである。イスキアの郷しらかわでは、この「父親学」をレクチャーしたいと考えている。単なる観念論ではなく、最先端の複雑系科学に基づいた真理である、システム思考の哲学という価値観の学びもするし、ノーベル賞を受賞したイリヤ・プリゴジンの提唱した自己組織化の理論学習をサポートしたい。そうすれば、子どもが尊敬して止まない父親の後ろ姿を見せられることであろう。

この関係性が劣悪化してしまった社会、つまり生きづらいこの世の中を変えない限り、引きこもりや不登校はなくならないかというと、けっしてそうではない。学校教育における価値観教育をしっかりするように、教育のイノベーションが必要だと思っている。しかし、この教育のイノベーションをするには、まだまだ世論が成熟していないこともあり、今すぐには難しい。家庭教育において価値観教育を始めるのは、父親が目覚めれば可能である。引きこもりの子どもは、父親に価値観教育に目覚めなさいと教えてくれているのかもしれない。父親が正しい価値観を確立して、引きこもりの子どもに対する価値観教育が出来れば、社会復帰が可能となるに違いない。社会が間違っていても、自分が正しいと確信する価値観を持っていれば、自信がついて社会に踏み出す不安がなくなるからである。

 

※イスキアの郷しらかわでは、「父親学」の講座を実施しています。ご依頼があれば、出張講座も承ります。父親が不在で一人親の場合は、母親学としてのレクチャーもします。

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