子どもの愛し方が解らない

子どもの愛し方が解らないという親が増えているという。勿論、子どもを愛していないのではないのだが、愛情の掛け方が解らないのである。そして、好きで好きで堪らないという感覚はなくて、嫌いではないという程度の感じだというのである。とても微妙な感覚なのであるが、子どもをどう扱っていいのかも解らないし、子どもに対してどのような態度をとっていいのかが判然としないらしい。どのような言葉をかけるのが好ましいのか、まったく解らないのだろう。親子の関係性は、残念ながら非常に希薄なものとなると思われる。

何故、子どもの愛し方が解らないかというと、あくまでも想像でしかないが、乳幼児期に自分自身が親から充分に愛されたという経験がないからではないだろうか。人間という生きものは、様々な経験から学ぶものである。見本となる人の模倣を通じて、自己成長を遂げていく生物である。とすれば、乳幼児期に愛される体験が不足してしまうと、我が子をも愛せないという事態に陥るのである。こういう親が、現代に意外と多いのである。だから、親子の関係性が希薄になり、養育上の諸問題が起きやすいと言われている。

それじゃ、何故自分が親から愛情を注がれなかったというと、実はその親もまた自分の親から愛されたという経験が欠如していることに原因がある。つまり、我が子を愛せないのは、先祖からのずっと続いている負の連鎖なのである。我が子を心から愛することが出来ないという症状が、先祖からずっと続いているという悲惨な事実が判明するに至り、これ以上ないという不幸に突き当たってしまうのである。勿論、愛したくなくて子どもを愛さないのではなくて、愛したくても愛する方法が解らないのであろう。

どんな子どもであっても、親が大好きである。表面的には憎しみを持つ場合もあろうが、それは愛があるからこその感情であり、嫌いな感情があったとしてもそれは本心ではない。子どもは親から心から愛されたいと思うのである。しかも、兄妹が他にいたとしても、自分が他の誰よりも愛されたいと思うのが子どもの心理でもある。ところが、親が子どもを愛する術を知らないと、その本心が子どもに伝わらないという不幸が起きてしまう。愛に飢えた子どもが育ってしまうのである。そうすると、親からの愛を過剰に求めてしまうので、不登校、引きこもり、DVなどの問題行動に発展しやすいのである。

この子どもの愛し方が解らないという不幸な歴史は、何時から始まったのかと言うと、少なくても江戸時代の親子の情愛はあったのだから、明治維新以降ではないかと見られる。あまり知られていないことだが、江戸時代の父親はイクメンであったのである。当時の職人たちは、朝の早い時刻から仕事をした。4時か5時には仕事を開始して、お昼過ぎくらいには仕事を終えて自宅に帰るという日課であった。残業なんて滅多にせずに家に真っすぐ帰り、幼い子どもと一緒に銭湯に行ったらしい。そして、帰宅したら家事育児を自ら進んでやったという。だから、子どもは父親が大好きであったし、父親も豊かな愛情を子ども注いだのだろう。

子どもというのは、何かを買ってもらったり何かをしてもらったりすることで、親の愛情を実感することはない。一緒に遊んでもらったり本を読んでもらったりの行動を共にして、その行動を親が心から楽しんで笑顔が溢れていると分かった時に、子どもは自分が愛されていると実感するものである。行動を一緒にする関わりあいや支え合いを通して、子どもと親が幸福感に包まれた時に、愛を実感するのだ。まずは、一緒の行動をしなくてはならないし、しかも子どもを支配したり制御したりせずに、ただ見守って寄り添うだけで良い。これが子どもを愛するということである。

江戸時代には豊かな愛情を注げた父親たちが、明治維新以降の近代化により、家族に関わる時間や機会がなくなった。したがって親の愛情をたっぷりと子どもに注げないばかりか、父である夫が妻を心から愛することも叶わなくなった。愛は連鎖して循環するものである。夫からの妻への愛が不足して、我が子への愛も注げなくなるのである。明治維新後の富国強兵策によって、働き方が変わってしまうことで家族との関わりあいが減少して、家族の関係性が希薄化してしまったのが、子どもの愛し方が解らなくなった元凶であろう。日本人は働き過ぎだろうと思う。家族や地域との関わりあいの時間が、たっぷりと持てる働き方を推進すべきである。子ども愛し方が解らないという親が、これ以上増えないためにも。

 

※イスキアの郷しらかわでは、父親学や母親学を学ぶ講座をしています。子どもへの愛情のかけ方、接し方、親子の情愛を深める方法などを学びます。原則として、講義料はいただきません。昼食代や宿泊料だけを頂戴するだけです。基本的にボランティアでやらせてもらいます。なお、出張講座もいたします。ご用命ください。

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