新しい子どもたち2~教育のイノベーション~

不登校や引きこもりにある若者たちを「新しい子どもたち」と定義して、社会を変革するきっかけになるというブログを書き記した。字数の関係で、どのようにして社会を変革するのか具体的な道筋を示さなかったので、改めて述べてみたい。まず、社会を変革するにはいろんな方法が考えられる。政治・行政・市民活動等によって社会の改革がされてきた歴史がある。社会全体の価値観や生き方そのものを変えるには、やはり教育から変える必要があろう。教育界におけるイノベーションを起こさなければならないと考えている。

イノベーションというと、日本語では「技術革新」と一般的に訳されている。企業における新商品の開発、または革新的な品質・性能の向上に用いられている。しかし、本来この「イノベーション」という語句の意味は、単なる技術革新だけではない。イノベーションが初めて提唱されたのは今から80年前のことであり、オーストリアのシュンペーターという人物が発表した語句である。彼は、今までの企業経営や製品開発ではいずれ行き詰るから、イノベーションを継続的に実施しなければならないと提唱した。その手法として、『創造的破壊』と『統合』が必須であると説いたのである。

さて、教育界におけるイノベーションについて具体的に述べてみたい。現在の教育界に存在している価値観とは、客観的合理性の追求であり、能力至上主義である。明治維新以降の近代教育に欧米から導入して、日本の近代的発展に寄与した。ところが、この客観的合理性の教育が自分中心で利己主義の人間を育成したばかりでなく、主体性、自発性、自主性、責任性の欠落した人間を大量に生み出したのである。さらには、行き過ぎた競争主義の導入が、教育環境を悪化させ、教師と生徒児童、子どもどうし、教師と保護者などの関係性を希薄化もしくは劣悪化させてしまったのである。だから、教育界にいじめやパワハラ、モラハラ、アカハラが起きてしまったのである。

本来、お互いの人間関係が豊かで良好であり、お互いに支え合う学校というコミュニティが存在するなら、いじめなどの問題は起きないし、指導死などというとんでもない事故も存在しえない。生徒児童どうしがお互いに慈しみ合うような関係にあるなら、不登校や引きこもりなどの問題は起きない。それぞれの関係性が悪いから、学校の在り方そのものに問題があり、不登校という形で問題が顕在化しているのである。とすれば、教育界に蔓延る間違った価値観そのものを一度破壊して、新しい価値観を導入すべきであろう。その価値観とは、全体最適と関係性重視の哲学である。

オランダの小学校では、システム思考の学びをしているという。この世はシステムであるから、そのシステムの原則に則った生き方をすることを指導しているのである。そのシステム思考の原則が、全体最適と関係性重視の価値観である。MIT(マサーチューセッツ工科大学)の上級講師であるピーター・センゲ氏が『学習する組織』という著作で説き、全世界に広がりを見せている理論である。大企業の役員は、システム思考の価値観学習に本気で取り組んでいる。システム思考しか、企業内の問題を解決し、企業が生き残る方法はないと確信しているからである。

教育界に蔓延っている古い価値観である、客観的合理性重視主義、言い換えるとニュートン以来の要素還元主義では、問題は解決出来ないばかりか、益々問題が先鋭化するばかりであろう。不登校・いじめ・指導死などの問題は、益々増大化・先鋭化するばかりである。このような低劣化してしまった価値観を手放して、新しい価値観であるシステム思考を教育界に導入すべきと考えている。オランダばかりでなく、他の欧米諸国もこのシステム思考に注目していて、学校教育と社員教育に導入しようと計画している。

何故、このシステム思考が青少年の健全育成に有効かというと、宇宙の仕組み、地球の仕組み、自然界の仕組み、人体の仕組み、社会の仕組みなどすべての万物がシステム思考によって成り立っているからである。量子力学や宇宙物理学、または分子生物学、最先端の脳科学で明らかになっているように、すべてのものは実体として存在せず、関係性によって存在しているからである。しかも、それらの構成要素は、自己組織性を持っていて、全体の為に働いているのである。つまり全体最適と関係性重視のシステムとして機能しているのである。このシステム思考を教えた子どもたちは、生き生きとして自ら学習する。子どもたちは、本能によってシステム思考が正しいと認識し、全体最適と関係性重視の生き方を志向するのである。教育界の古い価値観をぶち壊し、システム思考という正しい価値観を導入するイノベーションを起こそうではないか。

 

※イスキアの郷しらかわでは、このシステム思考の学習をしています。ピーター・センゲ氏が説いたシステム思考、自己マスタリー、メンタルモデルなどの学びをしています。ピータ・センゲ氏が説いているのは、非常に難しく理解しにくい学説です。イスキアの郷しらかわでは、子どもでも理解しやすいようにストーリー性のある優しい言語で説明しています。是非、研修会としてもご利用ください。

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