体内細菌と共生する

一般的に腸内フローラと呼ばれる腸内細菌叢(そう)の重要さが認識されている。腸内細菌が人々の健康な生活に欠かせないものだということが判明してきたのである。それは、身体的な健康ばかりでなく、精神面での良い影響もあることが分かってきている。脳内ホルモンの分泌など、脳の正常な働きにもおおいに関係していることが分かり、その重要性が認識されている。腸内環境が悪化すると、大腸の疾病だけでなく、人間の全身症状が悪化することが知られている。現代人に多い、過敏性大腸などの難病も腸内細菌が影響していると言われている。身体全体の免疫にも関係しているので、腸内環境が悪化すると、いろんな感染性疾患も発症しやすくなる。

さて、腸内細菌を代表とする体内に存在する細菌であるが、実に様々なものがあると言われている。ついこの前までは、これらの細菌やウィルスの重要性は認識されていなかったし、百害はあっても一利もないと思われていた。したがって、体内の菌やウィルスは駆除しても何の影響はないと思われていたのである。実際に、医療機関において投薬や注射によって抗生物質や抗菌剤が投与され、体内の菌は駆除され続けてきたのである。近年、胃潰瘍の原因はヘリコバクター・ピロリ菌だとされて、その除菌療法が保険適用の効果もあり、多くの人々は勧められるままに除菌療法を受けてしまった。抗生物質の乱用によって、体内細菌は除去されてしまう状況になっている。

ところが、ヘリコバクター・ピロリ菌を駆除したら、重篤な逆流性食道炎で苦しむ人が増えた。さらに、除菌療法によって有用な体内細菌も一緒に駆除されてしまい、他の疾病が発症するリスクも増えているらしい。どうやら腸内細菌も含めて、体内細菌が存在するそもそもの理由があると判明してきたという。人間というのは、長年に渡り環境に適応するように進化してきた。体内細菌もまた、その進化に合わせて環境に順応してきたらしい。それが、近年の急激な医学の進歩や科学技術の進歩により、有用な体内細菌までも駆除しつつある。抗生物質や殺菌剤の乱用により、逆に疾病に罹患する人を増やしているとしたら、実に皮肉なものである。

様々な新薬の開発に凌ぎを削っている薬品会社の苦労が想像できる。新薬の開発に遅れを取れば、会社そのものの存続が危うくなる。当然、かなり副作用の強い危険な薬品だって、手掛けるしかなくなる。厚労省の認可を得るために何度も治験を繰り返し、副作用のデータを収集して完全に安全なものとして世に出す。しかし、過去にもあった例であるが、副作用や危険性を意図的に隠して世に出してしまった新薬もない訳ではない。いずれにしても、抗菌剤や殺菌剤、または抗生物質を安易に使用しないように注意したいものである。

腸内細菌などの体内細菌を減少させたり壊滅させたりするのは、薬品だけではない。毎日飲んでいる水道だって危ない。ご存知のように水道には、次亜塩素酸ナトリウムという消毒剤が含まれている。水道法によって、1リットルの水に0.1㎎以上の塩素剤が含まれていなければ飲料水とは認めないとなっている。しかし、怖いのは実際にその基準の数倍以上の塩素剤が含まれていて、しかもその塩素剤と汚染物質が結びついて、有害な消毒副生産物が産生しているのである。塩素剤も含めてこの消毒副生産物は、ガンの発生原因にもなっているのである。食べ物にだって、消毒剤としての塩素剤は含まれているし、多種に渡る殺菌剤・除菌剤が添加物として入っている。これらが有用な体内細菌をも死滅させていることは、容易に想像できる。

薬品だけでなく食料品にも有用な体内細菌を駆除してしまう成分が含まれている。スーパーで売っているカット野菜は次亜塩素酸ソーダで殺菌されている。レストランのサラダバーの野菜も同じだ。スーパーやコンビニで売っている野菜サラダなんて、殺菌剤にまみれている。実は食べ物だけではない。ヘアーシャンプーやボディシャンプーなどにも抗菌剤殺菌剤が添加物として入っている。最近は、抗菌効果のあるおもちゃや日用雑貨品が増えてきたが、これらも皮膚表面に存在する有用な細菌を殺してしまう可能性がある。このように有用な体内細菌や皮膚細菌までも駆除してしまうので、十分に留意し食べるものや日用品は安全なものを選びたいものである。

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