無為に生きることの愚かさ

ゴルフのネットで組合せをする一人予約をたまに利用して楽しんでいる。いろんな人とラウンド出来て楽しい。平日のゴルフなので、同じ組になるのは殆どが会社などをリタイアした人たちである。つまり、私と同じ年金受給者の60代から70代のゴルフ愛好家である。ゴルフが楽しくて仕方ないという。仕事は現役時代に精一杯したから、もう沢山だという。それでは、何らかの市民活動やボランティアをしているのかと問うと、まったくそういうことはせず趣味の世界に浸っているらしい。NPO活動等の公益活動をしている人にお目にかかったことは今まで一度もない。

 

仕事を精一杯やり遂げてきたから、老後はのんびりと趣味の世界で生きたいという気持ちも理解できる。老後の蓄えは十分にあるし、年金も含めた生活資金は余裕があるから働きたくないし、現役時代は我慢してきたスポーツや趣味の世界を楽しみたいというのも当然であろう。しかし、そのような目的のない生き方、自分のためだけの生き方というのは如何なものであろうか。つまり、人生の目的実現やライフワークとして取り組む何かがなくて、ただ単に自分の人生を楽しく送るだけというのは、もったいないと思うのは私だけであろうか。

 

確かに、生きる意味はそれぞれあるだろうし、価値観も違って当たり前である。ただし、高い価値観や哲学に基づいた生きる意味を見出して生きていかないと、無為な人生を送ってしまうのではないかと思うのである。人間は考える葦であると言ったのはパスカルである。葦という植物は、少し風が強く吹くと折れとしまう非常にか弱い植物である。さらに、葦は何の役にも立たない生物でもある。人間というのは、「何故生きるのか」と常に自分に問い続けて考えていかなければ、葦のように何の役にも立たなくて、すぐに倒れてしまう弱い生き物になってしまうぞ、ということをパスカルは言いたかったに違いない。

人間という生き物は、自分の生き方を肯定したいものである。そして、自分の立ち位置から一歩踏み出すことに、不安や恐怖を持ちやすい生物らしい。ましてや、生きる意味や価値を考えることなく、何となく平穏に生きていることで満足していれば、そこから抜け出すことを嫌がるのではないだろうか。敢えて、自ら苦難困難を引き受けて、それを乗り越えたいと思う人はいないだろう。大変な苦労を伴うことだから、避けたいと思うのは当然である。楽しくおかしく、平和に生きたいと思うのは誰しも同じ。しかし、それだけでいいのだろうか。意味のない人生や無為な生き方になってもいいと、自信を持って断言できるのかと問いたい。

昔の人々の考え方がすべて正しいなどと乱暴な意見を述べるつもりはないが、少なくても生きることに対して、昔はもっと真摯だった気がする。だから、今は殆ど死語化しつつある、『無為』などという語彙があったように思う。人は何かの目的を持って生き、そしてその目的に添った目標を設定し、自分を高めつつ社会に対する貢献を実行してきた。そんな生き方も出来なくて、人生の目的も持たずにただ目の前の享楽に甘んじるような人を、無為に生きる人と称して蔑んできたのである。そのような人間が、やがて誰からも見放されて病気や事故に遭い、一人寂しく死んでいく姿を見てきて、無為に生きることで不幸せに陥ることが解っていたから、無為に生きることを戒めてきたのである。

それじゃ、生きるべき目的や価値観を持っていれば、幸せな人生を送れるのかというとそうではない。そもそも幸福とは何だろうかということを、まったくはき違えているからである。物質的な豊かさを持ち、面白おかしく生きることが幸福だと思っている人が多いが、そうではない。多くの人々の幸福に貢献できる人生を送ることこそが、心豊かな生き方であり真の幸福を実現するのである。多くの人々から敬愛されると共に、他の人々と絆を広く深くすることが出来て、お互いに支えあう人生を享受することが、人間本来の生き方ではないだろうか。故に、常に全体最適を目指すという高い価値観こそが人間には必要であり、自分個人や家族だけの幸福を目指すような低い価値観では、人間本来の生きる価値や意味を見つけ出すことは叶わないのである。

ただ生きていることに意味があり、あるがままに生きることに価値がある、というのはある意味正しい。ただし、それは真摯に謙虚に人生を生き、苦難困難にも自ら進んでぶち当たり乗り越えてきた人が言うには、説得力を持つ言葉だ。それこそ目の前の欲望に支配され流され、自分だけの利益だけを求めて、無為に生きてきた人が言うべき言葉ではない。人間は、世の為人の為にと必死に生き、自我を克服して真の自己を確立する為に学び成長し、多くの人々に夢と希望を与えるような生き方をしてこそ、生きる意味や価値があると言えよう。マザーテレサ女史や佐藤初女さんのように、死ぬまで人々の幸福に貢献する生き方を全うしたいと思っている。

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