不登校の本当の原因

一時期減少傾向を示していた不登校が、また増えているという。この不登校の統計データだが、あまり信用できない。何故なら、調査している主体が文科省であり、なるべく不登校の実数を少なくしようという意思が働いているからである。各県の教委や各市町村の教委もまた、学校に問題は存在しないと言いたいらしく、不登校やいじめなどの問題は存在しないと世間に公表したいと思われる。統計データほど当てにならない。何故なら、統計調査をする主体者の意図によって、結果が大きく変化するからである。統計調査は、問題を明らかにして解決を図るための資料とすべきなのに、お役人というのは自分の無力さを隠しておきたいらしく、問題を過少に見せたいみたいである。

最近、ようやく不登校に対する社会的認識が変わり、不登校を特別視しなくなり、不登校でもよしとする風潮が一般化してきた。それは、子どもを守るという緊急避難的措置としては正しいが、根本的な問題解決には至らない。したがって、うつ病が市民権を得て患者が爆発的に増えたように、不登校という状況があってもそっと見守ることが必要だなどという誤った認識が増えたお陰で、不登校が増えているとすれば由々しき大問題である。不登校の子どもに対して、教師と保護者が腫物にでも触るような態度をとり続けたとすれば、問題は解決されないばかりか益々悪化し兼ねない。不登校は見守るだけでは解決しない。何らかの対策が必要だと認識すべきである。

不登校の原因を文科省と学校では調査分析をしている。いじめ、虐待、学友との不和、学業不振、発達障害、病気、家族の問題等々様々な原因をあげている。しかし、こられは本当の原因ではない。あくまでも、これらは不登校のきっかけであり、本当の原因は他にあるという認識を持っている教育関係者はあまりいない。何故なら、不登校の本当の原因を親も担任も知らないからである。そして、本人さえもそのことを知らない。不登校の本当の原因である『関係性』の大切さを誰も認識していないのだから当然だろう。不登校という現象が起きるのは、関係性が劣化もしくは破たんしているからである。子どもと保護者、父親と母親、子どもと教師、保護者と教師、教師どうし、すべての関係性が貧弱であったり希薄であったりするから、不登校が起きるのである。不登校の原因をいじめや虐待、本人の精神的な問題を原因として取り扱っているうちは、不登校はこの世からなくなることはけっしてないであろう。

学校にいじめや虐待、友達との不和、先生への違和感や不信などが起きたら、そのことを子どもたちは保護者や親しい先生に素直に話すであろうか。今の子どもたちは、自分たちの心の闇を教師や校長・副校長に話さないし、保護者にも話さない。どんなにしつこく聞き出そうとしても、話せないのである。勿論、スクールカウンセラーにも話せない。何故かというと、学校における子どもと教師の関係性が崩壊しているし、家族というコミュニティも崩壊しているからである。関係性が実に貧弱であり希薄化しているし、心から支え合うという関係性と信頼感がなくなっているからである。特に不登校の子どもたちの両親(夫婦)の関係性は、表面的には良好に見えるけれども劣悪化しているケースが少なくないし、家族の関係性が非常に希薄化しているケースが多い。

不登校は日本だけの問題ではなく、先進国では増加の傾向にあるらしい。日本ほどの深刻ないじめや不登校が殆どない先進国もある。オランダである。自由な国だというせいもあるが、日本と違うのは小学校で『システム思考』を教えているという点である。システム思考というのは、全体最適と関係性の哲学である。子どもたちに、関係性の大切さを教えているし、個別最適よりも全体最適の重要性を伝えているという。学校教育において、人間どうしお互いの関係性を豊かにしなければ、正常な社会が成り立たないと教えているのは先進国ではオランダだけであろう。子どもどうしは勿論、保護者と子ども、先生と子どもの関係性が豊かであるしお互いに支え合っているから、不登校がないのであろう。

 

アジアの国々で不登校がない国も少なくない。タイ、カンボジア、ベトナム、ミャンマーなどでは不登校という概念さえない。貧しくて不登校になっている例はあるものの、深刻ないじめもないし不登校も存在しない。これらの国は何が違うかと言うと、仏教の国であるという点だ。仏教というのも実は『システム思考』の哲学を教えている。「縁起律」という概念で、関係性の大切さを説いている。この社会はシステムで出来ているし、社会は豊かな関係性によって成り立っている。したがって、関係性をないがしろにしたのでは、この社会そのものが存在しえないという教えなのである。江戸時代の日本でもシステム思考の教えが存在していた。現代の日本でも、システム思考の教育を取り入れていたとしたら、こんなにも不登校はなかったと推測される。

 

不登校の本当の原因は関係性にあるとする認識は、少しずつ増えてきている。または、社会における関係性の希薄化や劣悪化が不登校という問題を生んでいて、不登校の子どもたちは我々に関係性を改善しなさいと自ら教えてくれているんだと主張している専門家も増えている。学校教育、そして家庭教育において、今こそ「関係性」の重要性を教えていかなくてはならない時期にきているといえよう。それが、不登校をこの世から一掃する唯一の手立てであると心得たい。システム思考の哲学を基本にした「関係性の教育」を学校教育の現場で導入してほしいものである。

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