恋愛臆病症候群

今時の若者は、恋愛をしたがらないらしい。どういう訳なのか、恋愛をしたいと思わないという。したがって結婚も出来ないし、これでは子孫さえ作れない。現在のすべての若者がそうだとは言わないが、恋愛に対して臆病な若者は、想像以上に多いらしい。そして、自宅から独立せず、親の元でパラサイトの状態になっている若者が急増している。私たち中高年齢者から見たら、信じられないような態度である。いつも恋愛に憧れていた私らの若い頃と比較してみると、大変な違いだと思える。青春時代に恋をしたいと思うのは、誰しも同じだと思っていたのに、こんなにも恋愛に臆病な若者が多いのは実に不思議である。

さて、若者は恋愛に対して何故に臆病なのであろうか。多くの評論家たちは、それは若者たちが恋愛に失敗したり恋人に裏切られたりして、自分が傷つくのを恐れているからという分析をしている。または、自分自身の駄目な所や嫌な所が知られることにより、愛想を尽かされるのを極端に不安視しているのではないかという分析をしている人も多い。そして、昔は一刻も早く親から独立して独り暮らしをしたいと思っていたのに、今は親元から離れようとしない若者が増えているのである。家から独立せず、恋愛をしようともしないこれらの若者たちは、恋愛臆病症候群と呼べなくもないだろう。

面白いことに、これらの恋愛臆病症候群の若者たちは性衝動もないかというと、以外にもそうではないという。恋愛には臆病ながら、性行動は大胆に実行するというのだ。それも、恋愛感情のない相手とならば、平気で性交渉を行うというから信じられない。好きで好きで溜まらず、相手のすべてが欲しくて身も心も一体になりたいからと性衝動が起きると思うが、そういう相手には愛の告白さえ出来ず、性交渉も出来ずにいるらしい。本当に好きな相手に愛を告白したり性行動を起こして、もし万が一にも拒否されたら自分が傷付くと思い、行動に移れないと想像される。でも、嫌われてもいいと思うような相手となら、一夜を共にすることさえ平気らしいのだ。

そうすると、どうやら当世若者たちの深い心理状態が見えてくる。つまり、彼らの恋愛臆病症候群は、性的に未熟であったり性的欲求がなかったりするからではなく、精神的な未熟さが原因だと言える。言い換えれば、自己肯定観の未成熟さから、人から嫌われたり否定されたりすることを極端に避ける傾向があり、恋愛に対して臆病になっているということになる。今の若者たちの特徴的な傾向は、自己肯定観が低いばかりに極端に歪んだ自己愛に充ちていて、自分の異常な万能感という変なプライドに支配されている。だから、人から注意されたり叱られたりすると、極端に落ち込んだり逆切れをしたりするのであろう。実に精神状態が幼稚なのである。

それでは、恋愛に対して臆病なのは自分が傷付くことが怖いからというなら、何故そういう心境になるのであろうか。昔の若者と今の若者の心情は何が違うというのだろうか。そして何故、自己肯定観が低いのであろうか。真の自己肯定観をしっかり自分に根付かせる為には、真の自己確立が必要と考える。つまり、自我(エゴ)を克服して、自己を確立する経過を経なければ、たとえ自分が否定されたり拒否されたりしても、けっして揺るがない自己肯定観を確立することは出来ないのだ。つまり、真の自己証明であるアイデンティの確立こそが必須なのである。

ところが、今の若者たちは自己の確立が出来ないばかりか、自我の確立さえ出来ない者もいるという。つまり、親子の精神分離さえ出来ず、親離れ子離れが出来ずにいるのである。そんな若者であるのだから、相手の複雑な気持ちを汲み取りながら、自分の欲望との折り合いを図りつつ、二人の愛を育むというような複雑なプロセスを踏める筈がない。しかし、人間というのは、狂おしく眠れず食べ物も喉を通らないような思いをしながらも、恋愛を経験して行かないと、精神的な成長を遂げることが出来ない。何度かの恋愛を繰り返しながら、人はいろんなことを気付き学ぶものである。勇気を出して傷付くことを恐れず、恋愛臆病症候群を乗り越えてほしいものである。若者だけでなく、中高年者も同じだと思う。一度や二度恋愛・結婚に失敗したからといって、恋する気持ちを捨ててはいけない。

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