家庭崩壊の訳

今、家族の絆がなくなり、家庭崩壊が進んでいると言われている。夫婦関係も親子関係も、本来の関係性を持ち得ていない。つまり、本来は家族がお互いに対して、慈愛・博愛に満ちた行動を取るべきなのに、家族それぞれが自分中心の行動を取る傾向にあるのだ。妻は、夫を尊敬する気持ちが失せてしまい、カルチャースクールや趣味の世界に没頭する。または、妻が仕事や市民活動だけに生きがいを見出しているケースも多い。このように、表面的には仲の良いそぶりを見せているが、仮面夫婦を演じている家庭が少なくない。子どもは、自分を何かと支配・制御しようとする親をうざったいと思い、低い価値観しか持ち得ない父親を軽蔑さえしている。子どもらは、何から何まで指示を下す母親を毛嫌いし、家庭を顧みず自分の都合だけで叱る父親を遠ざけている。

父親と言うのは、本来家庭におる精神的・肉体的支柱にならなければならない。つまり、大黒柱なのである。父親というのは、身を挺してでも敢然と家族を守るべき存在であらねばならないし、精神的な拠り所としても機能しなければならない。そうして初めて、家族は安心して社会にも出て行けるし、精神的にも自立できるのである。ところが、家庭の中に父親の存在は希薄化している。見せるべき、尊敬し信頼できる父親の後姿は、まったくないのである。であるから、父親の存在価値を見出せないと見切った母親は、シングルマザーのほうがよっぽど子どもにとっても幸せだという結論を出すのである。また、団塊世代の妻は、価値観の低い夫に愛想をつかして熟年離婚をするのだ。児童虐待を起こす家庭においては、例外はあるものの殆どのケースで父親が本来の家庭における機能を果たしていないと言える。

世の中における最小単位のコミュニティである家庭は、このようにして崩壊してしまっているのだ。表面的に上手く行っていると思っている、または思い込もうとしている家庭は、まだまだ多いが、実質的には破綻していると言えよう。その証拠に、何か重大な問題が家庭内に起きると、自己解決能力を発揮することが出来ないのである。虐待、いじめ、不登校、引きこもり、DV、非行、うつ病の発症、離婚、リストラ等の問題が起きた場合、為す術を持たず、おろおろするだけである。こういった問題は、外的要因によるものだと思われがちだが、実はその真の原因は家庭内や家族のあり方に内包していることが多いのだ。コミュニティが崩壊するそもそもの原因は、家族どうしの関係性にあると言えよう。

さて、こんなふうに家庭が崩壊してしまった原因は何かというと、一言で言えばそれは関係性の欠如と言えよう。本来家族というものは、関係性を重視しなければならないのに、あまりにも個を重要視するあまり、その関係性をないがしろにしてしまったのである。それは、近代の教育において、関係性よりも個の大切さを教え込んだ為に、自分さえ良ければいいんだという間違った価値観を獲得してしまったことによるものだ。関係性を深める為には、相手の気持ちを慮る必要がある。つまり、相手の気持ちになりきっての言動が必要なのである。ところが、近代教育では、分離思考・分析思考であるところの個人を大切にすることだけを教えたから、良好な関係性を失くしてしまったのである。行き過ぎた要素還元主義の弊害とも言える。

しかしながら、今もって家族の絆をしっかと結んでいる家族もいる。その家庭は、例外なく父親が高い価値観を持っている。高い価値観とは、宇宙全体をひとつのシステムと捉え、そのシステムを構成する要素のひとつである家庭というコミュニティを、システム思考で捉える価値観である。宇宙システムは、ある一定のプロセスに向かって進んでいるということが証明されつつある。そのプロセスに則った生き方を家族全員が志すならば、関係性が深くならざるを得ないのである。つまり、宇宙における構成要素である人間は、宇宙そのものが目指している、他の幸福を願う心、つまり利他の精神に基づいた行動をしなければならないのである。自分ばかりの利益だけでなく、全体の幸福や利益に貢献したいと強く思い、率先して行動することこそが、家族というコミュニティを守り育てるのである。

このシステム思考を父親が深く理解して、自らの利他的な行動を実践することで、常に家族に対してこのメッセージを送り続けることが必要なのである。利己的な行動を慎み、家族の為、世の中の為に、進んでリスクを負担する姿勢が家族や地域の人々を感動させ、勇気を与えるのである。それでは、父親が居ない家庭は無理かというとそうではない。祖父や叔父、または母親か祖母でも、その役割を十分に果たせるのである。明治維新以前は、このようなシステム思考の価値観の勉強を学校や地域でしていたのである。そういう思想・哲学の学校教育や家庭での教育を復活さることが急務であるし、こういった価値観を喧伝し普及させる使命が私たちに課せられているといえよう。これ以上、家庭崩壊により不幸な家族を作り出さない為にも、高い価値観であるシステム思考を持つ父親を世に送り出さなければならない。

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