運命か、それとも自由意志か

我々人間は、運命によって支配されているのであろうか。それとも、自分の運命は自由意志によって、どのようにでも変えられるのであろうか。2000年以上も今まで議論をされ続けてきた問題であるが、結論はまだ出ていない。今までは、観念論や宗教哲学等として考察されてきたのであるが、最近は最先端の科学的手法によって、その真偽が明らかにされようとしている。面白い結論が導かれようとしていることが、実に興味深い。

物理学者、量子力学者、神経学者、脳科学者たちは、運命か自由意志かの検証を続けている。ノーベル物理学賞を受賞したトホーフト博士らは、量子力学や素粒子の観点や神経学の実験などから、実に様々な仮説を唱えている。一部の科学者は、人間は自由意志を使って自分の行動をコントロールしているように見えるが、無意識の意識が行動を起こす10秒前に働いていて、意識している意識に影響を与えているこという実験結果を示し、やはり人間は何らかの見えないものに操られているのではないかと結論付けている。運命に支配されているというのである。

一方、ある量子物理学の博士たちは、素粒子の不確定性原理を用いて、量子力学のあいまいさによって、ある程度人間の意識が物体に影響を及ぼすことが出来ると説いている。つまり、100%ではないにしても、ある程度の部分は人間の意識で運命をも変えられるのではないかという仮説を主張しているのである。いずれにしても、どちらの仮説も、完全に実証されている訳ではない。どちらを信じるかは、本人の選択によるであろう。

ところで、カリフォルニア大学のジョナサン・スクーラー氏は、実に面白い実験を実施した。学生を被験者にして、まず2つのグループに分けた。一方は、人間は運命に支配されているので自由意志で運命を変えることは出来ないというメッセージを長い時間受けたグループである。もうひとつのグループでは、自由意志で人間の人生はどうにでも変えられるし、運命さえも自分の意思により変えることが出来るというメッセージを長い時間見せられたのである。そして、あるダミーの問題を解くように指示を受け、採点の時間がなくなったので自己採点をするようにとの指示を学生たちは受けた。しかも、その問題は超難問であり、殆どの学生が2問くらいしか正解出来ない問題であるし、正解ひとつに付き1ドルを用意した小瓶の中から自由に取ってよいとしたのである。

そうしたら、実に面白い実験結果になったという。自由意志で運命さえも変えられるというメッセージを受け続けた学生は、殆ど誤魔化しをしなかったという。ところが、人間は運命によって支配されているから自由意志は働かないというメッセージを見続けた学生は、正解以上の1ドルコインを手にしてしまったという。つまり、人間は運命に縛られていると思い込んでしまった学生は不正を働き、人間は自由意志によって行動するとした学生は、正義感や倫理観が高くなり不正を働かなかったということらしい。

何故、そんなことになってしまったのかというと、どうせ自分は運命によって支配をされているのだからということで、正しく生きるべきだという倫理観が低下してしまったらしい。または、元々あった欲望の暴走が、運命によって支配されているということを言い訳にして止められなかったという見方をしている。いずれにしても、人間とは自由意志で生きていると思っているほうが、倫理観が高まるし、運命に支配されているから自由意志は働かないという考え方は、人間の道徳観念を著しく低下させるということである。我々はどんな価値観を持って生きるべきかということを如実に示していると言えよう。子どもたちの教育にも、生かしていきたいものである。

 

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